「逆さ富士」を実現した施工BIM、成功の鍵は設計データの精査:BIM/CAD(2/3 ページ)
2017年12月に完成した「富士山世界遺産センター」。「逆さ富士」を表現した木格子が目を引く同センターの施工にはBIMが導入された。複雑な意匠を表現するために、どのようにBIMを活用したのか。施工を担当した佐藤工業とシンテグレートに聞いた。
8000個の部材から成る木格子、どう再現したか
シンテグレートが今回のプロジェクトでまず行ったのが、設計データのジオメトリー分析と、基本サーフェスのモデリングだ。設計者の作成したデータを、実際に実現(施工)可能なのか、可能ならばどのように作ることができるかを検証する。そして、施工や部材の製造を考慮し、“実際に作れるデータ”を再びモデリングする。
展示棟を覆うように取り付けられた外壁の木格子のデザインは、水盤に反映することで富士山の形が浮かび上がるという狙いが込められている。緩やかに反った木が編み込まれたような意匠で、約8000ピースの部材から構成されている。なお、木材には静岡県産のヒノキ材を使用している。
この木格子を製造・施工したのは木構造メーカーのシェルター(山形県山形市)。最終的に木格子のモデルデータは、シェルターが導入する新型の三次元加工機で利用できる形式にする必要があると同時に、コスト低減や工期順守のために歩留まりも考慮する必要があった。シンテグレートではこうした条件の下、まず坂茂建築設計が「Rhinoceros」で作成した木格子のデータから、どういった形状の部材を製造し、どのように現場で組み上げて施工すべきかを解析。これらの作業はシェルターと連携して進め、最終的に1つ1つ異なる形状の、約3500種類のモデルデータを作成したという。
施工現場での効率も考慮し、各データには施工手順に沿った番号も割り振られている。実際に製造された部材は、短いもので10cm、長いもので3m。組み立てる際の交点は、角度がそれぞれ違う形状で、7261カ所存在するという。これを3カ月程度かけて現場で組み立てた。
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