遮光のグラデーションが可能に、調光ガラスに新たな可能性:省エネビル(2/2 ページ)
物質・材料研究機構と早稲田大学、多摩美術大学は共同で、遮光状態がグラデーション変化する調光ガラスを開発したと発表した。この調光ガラスは、同グループが研究を進めてきた新素材のポリマーを活用しており、遮光と眺望の両立が特長だとする。
グラデーション機能のもう1つの立役者はユニークな電極構造
今回開発された調光ガラスのグラデーション機能は、EC材料である有機/金属ハイブリッドポリマーの他に、ユニークな電極設計によって実現されている。このポリマーは、印可電圧を低下させていくと色変化の速度も低下していく性質がある。そこで、電力を供給する電極から遠ざかるほど、ポリマーへの印可電圧が低下する電極構造とすることにより、色調を段階的に変化させられるグラデーション機能を実現したという。
ポリマーへ電圧を印可する透明電極は、ガラス上に細かく区分けされており、区分け部分を極めて細い透明電極で接続している。この極めて細い電極部分は非常に大きな配線抵抗となるので、一方向から電気を供給すると、流す方向に沿って電極の抵抗値が階段状に増加する。よって、各区分けされた透明電極に印可される実効電圧が低下し、ポリマーの色変化が遅くなることで、グラデーションが実現できるという。
このポリマーと電極構造を採用した結果、調光ガラスの電極間に3Vの電圧を印可することで、ガラス全体が遮光状態から透明状態まで約80秒でグラデーション変化し、電極の極性を入れ替えると、透明状態から遮光状態まで約40秒でグラデーション変化する調光ガラス(サイズ:20×20cm)の作製に成功した。
今回の技術を活用することで、オートサンシェイド(自動遮光)機能を自動車のフロントガラスに付与して運転の安全性を高めたり、高層ビルの窓に導入して遮光による空調の省エネルギー化と眺望の両立が可能になるという。今後、実用化に向けて耐熱耐光性の向上や、色ムラの修正など開発を続けていくとする。
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