遮光のグラデーションが可能に、調光ガラスに新たな可能性:省エネビル(1/2 ページ)
物質・材料研究機構と早稲田大学、多摩美術大学は共同で、遮光状態がグラデーション変化する調光ガラスを開発したと発表した。この調光ガラスは、同グループが研究を進めてきた新素材のポリマーを活用しており、遮光と眺望の両立が特長だとする。
遮光と眺望を両立できる調光ガラス
物質・材料研究機構(以下、NIMS)と早稲田大学、多摩美術大学は共同で、遮光状態がグラデーション変化する調光ガラスを開発したと発表した。この調光ガラスは、同グループが研究を進めてきた新素材の「有機/金属ハイブリッドポリマー」を活用。既存の遮光ガラスでは実現が困難であった、遮光と眺望の両立が特長だとしている。
今回開発した調光ガラスは、電気を加えることで色が変わる物質であるエレクトロクロミック(EC)材料を用いたEC方式による調光となる。有機/金属ハイブリッドポリマーは、素早い色変化、色変化の繰り返し安定性が高い、豊富なカラーバリエーションなど、EC材料として優れた特性を持つことがこれまでの研究で判明しており、調光ガラスへの適用も応用例の1つだという。
有機/金属ハイブリッドポリマーは、金属イオンと有機配位子が交互につながったものであり、ポリマーの着色現象は金属イオンから有機配位子への電荷移動吸収が可視光域で起こることによって発現する。よって、ポリマー中の金属イオンを電気化学的に酸化還元すると、電荷移動吸収が消失発現するために、ポリマーに電力を供給することで色が変わり、電力供給しない場合はその色状態を保持することができる。また、ポリマーの色は金属イオンの種類によって制御できるという。
今回の調光ガラスでは、ポリマー中の金属イオンに鉄を用いた膜をEC材料として、鉄イオンの酸化状態(2価と3価)を電力供給によって変更する。この膜に1.2Vの電圧を印可した場合、膜面積1.0×1.5cmの場合は遮光化に要する時間が0.31秒、透明化にかかる時間が0.58秒と非常に速く、透明化と遮光化の繰り返し耐久性も10万回を超えるといいう。これには、今回開発した調光ガラスのグラデーション機能にポリマーの特性が大きく貢献しているとする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.