未来のBEMSが実現するビル環境の姿とは:基礎から学ぶBEMS活用(5)(2/2 ページ)
ビルの効率的な省エネ施策に欠かせないIT/IoT活用。本連載ではBEMSを筆頭に、あらためてその仕組みや導入のポイントなどを解説していく。最終回となる本稿では、将来に向けたBEMSの進化の方向性と、それによって実現する未来について考察する。
一人ひとりにあった最適空間を演出する
オープンイノベーションとの融合でBEMSの役割はますます広範になると述べましたが、一方で「多様性」あるいは「ダイバーシティ(Diversity)」といった個人を尊重し、互いを受け入れあうという考え方が浸透しつつある中で、個人にフォーカスした設備制御も重要な役割となりつつあります。昨今、企業においても一人ひとりにあった働き方の推進とともに、それを可能にする職場環境づくりが重要な経営課題となってきました。BEMSもそのようなニーズに対応していくべく、今後はさらに個人にフォーカスした最適空間の演出も大きな役割となっていくと考えられます。
つまり、各ユーザーの好みに合わせたユーザーインタフェース(UI:情報・表現・操作性・デバイスなど)と適切なUX(ユーザーエクスペリエンス)の実現をサポートするということです。さらに言い換えれば、全体はもちろんのこと、個別の最適化も同時に実現する(図る)ことが目的になります。
例えば、「快適」というUXを実現する例として、中央監視室のオペレーター、または在室者が好みに応じて自ら室温の設定を変えるといったケースを想定してみましょう。全体の室温の設定は数値ベースで操作することができますが、対象となる人や周りの環境によっては、その温度が必ずしも快適ないしは最適でない場合もあります。同じ室温でも人や場所によって感じ方が異なるため、何回かの操作が必要となることもあるでしょう。全員がちょうど良いと感じるまでには、相応の時間と手間を要してしまうかもしれません。
しかし、将来のBEMSはIoTやAI、オープンイノベーションによる革新によって、こうしたムダを解消し、自動でリアルタイムに「快適を維持する」ことができるようになると見込まれています。さらには、室環境や混雑具合いなどのユーザーの周辺状況に合わせた制御や、必要に応じて在室者一人ひとりのバイタルサインを検知し、ヘルスチェック、休憩や気分転換を促すアドバイスの提供をする、といったことももはや夢ではありません。
また、BEMSと連携する各種の機能やサービスも、多言語・自然言語での会話型UIやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)技術の適用などによって、これまでにない画期的なアプリケーションと施設運用・管理を現実のものとするでしょう。
BEMSとその構成機器などに限らず、多種多様なシステムや機械・装置のスマート化がさらに進み、それほど遠くない未来には、まさにSF映画のような人が直接操作することなく、全てが効率的に機能し、快適でサステナブルな世界が実現されているかもしれません。
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