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未来のBEMSが実現するビル環境の姿とは基礎から学ぶBEMS活用(5)(1/2 ページ)

ビルの効率的な省エネ施策に欠かせないIT/IoT活用。本連載ではBEMSを筆頭に、あらためてその仕組みや導入のポイントなどを解説していく。最終回となる本稿では、将来に向けたBEMSの進化の方向性と、それによって実現する未来について考察する。

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 本連載では4回にわたり、BEMSのこれまでと現在を中心に、その主な役割や機能、活用例などについて紹介してきました。本稿では、本連載の最終回として将来に向けたBEMSの進化の方向性と、それに伴ってどういったことが可能になるのかについて考察してみたいと思います。

オープンイノベーションでBEMSの管理対象はより広範に

 本連載で触れてきた通り、時代の変化に伴う利用者のニーズに対応しながら、BAS(設備の運転・監視システム)は、BEMS(エネルギー使用の効率化管理・制御システム)としての機能を拡充し、進化してきました。今後、BEMSの機能や役割、位置づけ、形態は多様なテクノロジーやアイデアと融合するオープンイノベーションによって、さらなる発展と革新が期待されています。

 オープンイノベーションは、自社のみならず他の企業や教育機関、地方自治体などと連携し、革新的なビジネスモデル、製品、サービスを生み出すイノベーションの手法です。特に日本では、グローバル化や市場の成熟に伴い多様化するニーズに対応し、国内企業の競争力を強化するため積極的に推進されています。

 ビルオートメーション業界では、建物の内外を問わず、IoTによる連携と統合、すなわち「インテグレーション」が既に始まっていますが、収集された多種多様で膨大な情報やデータ(Big Data/Data Lake)をいかに有効なサービスやアプリケーションとして提供するのかが今後の大きな課題となっています。そこでキーワードとなるのがオープンイノベーションです。

 例えばエネルギー分野では、電力自由化に伴い分散電源の導入が拡大するなど、エネルギーリソースの多様化が進んでいます。それに伴い、経済産業省が主体となり、「ERAB(エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス)検討会」などの場を通して、国全体としてエネルギー効率を高めるための新たな取り組みが進められています。

 例えば、アグリゲーターが需要家側のエネルギーリソースを制御し、IoTの活用によって需要家群をとりまとめることで、1つの発電所のように機能させる「VPP(バーチャル・パワー・プラント:仮想発電所)」を構築する実証が盛んに行われています。

 さらにこうしたVPPなどの進展に伴い、需要家の電力需要を制御する「デマンドレスポンス」にも注目が集まっています。需要家が節電した電力を事業者が買い取り、その電力を他の需要家に供給する「ネガワット取引」が可能になるなど、節電だけでなく、エネルギーの管理・制御を通した新たなビジネスやサービスの創出も期待されています。

 これらの取り組みが進むと、今後電力や熱の需給調整・管理は、ビルという需要家単位でより緻密かつ厳格に行うことが求められ、さらには個人の住宅、そしてEV(電気自動車)までもが連携したシステムとして管理されていくことが予想されます。こうした、さまざまなエネルギーリソースとつながるこの一連の制御や管理は、エネルギーバリューチェーンとして最適化されていきます。

 その中で、BEMSは電力の発電から節電、貯蔵までの、あらゆる場面において重要な役割を担うことになり、今後は外部システムと連携していくことが必須となっていきます。そのため、今後のBEMSの発展には、オープンイノベーションが有効かつ必然的な手段となっていくのです。

 今後、BEMSが直接にエネルギーインフラに組込まれることになれば、BEMS間はもとより、工場、マンション/住宅、街全体など、さまざまなエネルギーマネジメントシステム(EMS)とのコミュニケーションが求められると想定されます。合わせて、ユーザーとBEMSにつながるモノの多様化・スマート化が進むことになり、BEMSが「ビルの情報基盤」として、より細分化された情報や機能・サービスに柔軟に機能することを可能とし、その位置付けがこれまで以上に重要なものになると考えられます。

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