検索
連載

潜在ニーズを可視化する、住宅設計で見えたVRのメリット建築×VR(1)(2/3 ページ)

建築分野での活用に注目が集まっているVR。「VRは設計事務所にとって非常に有効なツール」と語るのが、デザイン住宅設計を手掛けるフリーダムアーキテクツデザインだ。2016年から設計業務や顧客提案にVRを活用し始めた同社に、VRを利用するメリットや成果について聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

設計事務所のノウハウをVRで伝える

 フリーダムアーキテクツデザインでは、VRシステムが実際の業務に有効かどうかを検証するため、試験運用として複数回の打ち合わせを経て設計提案も行ったが、その後成約にまでは至らず、コミュニケーションがストップしてしまっている顧客11人を対象に「VR体験会」を開催した。

 体験会の内容は、同じ間取り、同じ平米数の2つの設計モデルをVRで体験してもらうというもの。1つが一般的なハウスメーカーのモデルで、もう1つはフリーダムアーキテクツが設計したモデルだ。それぞれのモデルをVRで体験してもらい、比較してもらう。

 体験会をこのような内容とした背景には、独立系設計事務所だからこその悩みがあった。「顧客の中には『フリーダムアーキテクツのデザインは気に入ったけど、ちょっと設計料が高い気がする。じゃあこのデザインや図面を、他の工務店に持っていけば、似たような家が安く建てられるのでは』と考え、途中から他社で話を進められる方もいる。でも、実際にはわれわれのような設計事務所だからこそのノウハウがある。例えば階段の形状や窓の配置1つで、住環境や印象は大きく変わる。こうした強みは、2Dの図面やCGだけではなかなか理解してもらいにくい。そこで2つのモデルを比較し、設計事務所のノウハウの部分をVRでリアルに体験してもらえるようにした」(長澤氏)

体験会後に成約に至った例も

 体験会後にアンケートを実施したところ、9割以上の顧客が同じ間取り、面積でも設計によって大きな差が生まれることを認識してもらえたという。その上で「設計監理業務について、費用を支払う価値を感じることができたか?」という質問に対し、全ての顧客が「非常に感じられた」もしくは「感じられた」と回答し、コスト面での理解も得られたという。


アンケート結果の一例(クリックで拡大) 資料提供:フリーダムアーキテクツデザイン

 また、2Dの平面図だけで具体的なイメージを伝えることの難しさも浮き彫りになった。「平面図で実際の空間がイメージできていましたか?」という質問に対し、「できていた」「ほぼできていた」と回答した顧客は55%だった。

 「あえて打ち合わせの中で、弊社に対してあまりポジティブな印象を持っていなかった顧客11人に体験してもらったが、体験会を経て契約に至った案件もある。VRの活用によって、それくらい設計というものに対して深く理解してもらえるようになった」(長澤氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る