建設業界を変えるテクノロジーたち:BIMで変わる建設業の未来(4)(1/3 ページ)
BIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく本連載。第4回では建設業界にイノベーションをもたらす可能性があるさまざまなテクノロジーをピックアップして紹介する。
本連載では建築建設業におけるICTの活用というテーマで、これまでBIMというキーワードを中心にさまざまな事例を取り上げてきたが、有用なテクノロジーは他にも多く存在している。従来型の産業では、「ヒト・モノ・カネ」という要素が重要視されてきたが、現代においてはコンピューティング・テクノロジーの成長が目覚ましく、「ヒト・データ・キカイ」を重視したビジネスモデルにシフトしているといわれている。
今回は、このヒト・データ・キカイをつなぐさまざまなテクノロジーがどのように建築建設業界に影響してきているのか、それぞれキーワードをもとに幾つかの代表的なものを紹介したいと思う。紹介するテクノロジーの中にはそれ単体としては最新とは言えないものもあるが、それらがつながっていくことで今後、建築建設業界にも普及し、イノベーションを起こすかどうか、という視点で選定している。
従来、人とコンピューターの関わりはI/O(インプットとアウトプット)、つまり画面やキーボード、マウスというつながりに縛られてきたが、今ではこの関わり方が大きく変化しようとしている。
「VR/AR」
その代表するテクノロジーの1つがVRやARだ。2016年はVR/AR元年といわれており、この分野への投資金額は2000億円にのぼると推定されている。最近では比較的安価で高性能なシステムが入手できるようになった。例えば、HTC社のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)である「Vive」とGoogle社のVRペインティングソフト「Tilt Brush」を利用すると、全く新しい形の3Dペインティング環境を構築できるようになった。
また、DAQRI社が開発する「スマートヘルメット」は、建設現場で設計情報や施工状態を現実に重ね合わせるように確認できるARシステムを搭載したヘルメットだ。こうしたAR/VRによって建築建設業界においても設計や施工のコミュニケーション手法が大きく変わることは間違いない。
「ペンタブレット」
商業製品化されてから50年以上が経っているペンとタブレットを組み合わせたテクノロジーも、大きく変革しようとしている。例えば、Microsoft社の「Surface」でMental Canvas社のグラフィックスシステムを使えば、従来の2次元のペイント環境とは異なる、3次元のコンピュータ・デザイン環境が構築できる。米国のエール大学の教授によって開発されたこの環境では、「サーフェス・ダイアル」と呼ばれるデバイスを使いながら、3次元的に奥行きのあるスケッチをタブレット上で描いていくことができる。
このテクノロジーは、紙とペンという従来からの手法を好むデザイナーにとっても、さほど難しいトレーニングなど必要とせずに、思考や表現の可能性を大きく変革させる可能性があるだろう。
「タッチパネル」
タッチパネル機器もさまざまな方式のものが使われてきているが、iPhone/iPadで採用されている静電容量方式が普及し、その位置精度と反応速度は人間の体感としてもほぼ違和感がなくなった。近年では、40インチ以上の大型のタッチパネルモニターが実用化され、壁掛け型やテーブル埋め込み型で利用できるようになってきた。例えばこうした大型のタッチパネルモニターと、Bluescape社のビジュアル・コラボレーション・プラットフォームと組み合わせることにより、画像データを両手で自由に拡大縮小移動させたり、文字や図形を自由に書き込んだりでき、モバイルデバイスやデスクトップマシンを使用している遠隔のチームと共有もできる。
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