切羽面を3Dに、トンネル施工のドリル誘導を効率化する新システム:情報化施工(2/2 ページ)
鹿島建設は演算工房と共同で、山岳トンネル工事でドリルジャンボの削孔を誘導する新システムを開発したと発表した。オペレーターの操作を支援し、正確で迅速な削孔に貢献するという。
熟練作業者不足への対応にも活用
新開発のMOLEsは、光波測量によりジャンボ自身の位置や姿勢を把握するターゲット、切羽面の凹凸を把握する3Dスキャナー、切羽面とブームの動きを捉える動画カメラ、削孔誘導画面を表示するモニターから構成されている。従来の削孔ガイダンスシステムで必要であった電気式のモーションセンサ類が一切不要なため、振動や粉じん、削孔水による故障も少なく、汎用のドリルジャンボへの後付け設置も容易だ。
また、3Dスキャナーによって得られる実切羽面の凹凸座標から誘導ラインを計算し、それがリアルタイムにモニターに映し出される。モニターには誘導ラインと3色の誘導マーカーが表示されており、オペレータはその誘導ラインに自身の操作するブームを合わせ、誘導マーカーの通りに削孔する。これだけで、削孔位置・削孔角度に加えて削孔長も計画通りに施工でき、オペレータの技量に頼ることなく、確実な削孔が容易に行える。
唐丹第3トンネルでは、2台のドリルジャンボで切羽の左右をそれぞれ削孔していたが、両方のドリルジャンボに同システムを搭載したところ、計画通りの削孔作業が行え、導入前に比べて左右の切羽での進行差が減少し、切羽面の凹凸も少なくなった。さらに、1発破ごとの進行長も導入前と比較して約25%向上し、安定した発破進行長を確保することができ、月進記録の達成に大きく貢献したという。
今回開発したシステムは視覚的に分かりやすいというメリットがある。そのため経験の浅いオペレータでも計画通りの削孔が行いやすくなることから、鹿島では今後の熟練作業員不足への対策にも大きく貢献するシステムと考えている。また、汎用型のドリルジャンボに簡単に後付け設置できることから、コストを抑えながら精度の高い掘進が行え、工期短縮にも寄与することも特徴の1つだ。
鹿島は、2017年1月から他のトンネル現場でも同システムの運用を開始しており、今後、複数の現場で工期短縮と余掘りの低減効果について検証を行い、山岳トンネル工事の合理化に引き続き取り組む方針だ。
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