切羽面を3Dに、トンネル施工のドリル誘導を効率化する新システム:情報化施工(1/2 ページ)
鹿島建設は演算工房と共同で、山岳トンネル工事でドリルジャンボの削孔を誘導する新システムを開発したと発表した。オペレーターの操作を支援し、正確で迅速な削孔に貢献するという。
鹿島は、建設工事現場向けソフトウェア開発の演算工房(京都市)と共同で、山岳トンネル施工に利用するドリルジャンボの新しい削孔誘導システム「MOLEs(Mograss Operate with Laser Scanning Engine System)を開発し、岩手県釜石市で施工中の「国道45号 唐丹第3トンネル工事」に初適用したと発表した。
同システムは、演算工房が保有する削孔ガイダンスシステムに、鹿島独自のスキャニング技術を付加し、モニターに実切羽面と削孔位置を表示するもので、オペレータに対して視覚的にわかりやすい誘導が可能となる。同システムを採用した唐丹第3トンネル工事では、所定の発破進行長(一度の発破で掘進する距離)を安定して確保することができ、2016年7月に記録した月進270m(メートル)の達成に大きく貢献したという。
山岳トンネル工事では、工期短縮と余掘り低減のため、火薬装填用の発破孔の削孔にあたり、計画通りの削孔位置、削孔角度、削孔深さとなるよう、正確かつ迅速な削孔作業が求められる。従来この作業はオペレータの経験によるところが大きく、将来的には熟練作業員不足が懸念されている。
近年、ICTの進歩に伴い、削孔作業を支援するガイダンスソフトが開発されているが、実体のない仮想の切羽面 (仮想切羽面)上でグラフィックを用いて削孔位置へと誘導するため、凹凸のある実際の切羽面とのズレが生じ、普及が進んでいない。一方でフルオート削孔が可能なコンピュータジャンボも開発されているが、マシンそのものが高価なため、これも普及が遅れている。そこで鹿島は、演算工房が保有する削孔ガイダンスシステム「MoGraSS」に、独自の3Dスキャナー技術を付加した新しい削孔誘導システムを開発した。
今回、付加した機能は、切羽面をスキャニングし、実切羽の凹凸面を座標として把握した上で、計画発破孔の位置と削孔角度を正確に算出し、モニターに誘導ガイダンスを表示するもの。これにより、仮想切羽面での誘導で生じていた操作性の悪さや実切羽面とのズレはなくなり、正確かつ迅速な削孔作業が行えるようになった。
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