ビルのエネルギーは8割が無駄、効率化にはIoTが必須に:省エネビル(1/2 ページ)
地球温暖化対策など国際的に省エネルギー化への取り組みが強まる中、建築物の省エネ化は大きく遅れているといえる。建築物の省エネ化にはさまざまなアプローチがあるが、重要なポイントが「人の動きをどう捉えるか」という点だ。そのカギを握る技術としてIoTが大きな注目を集めている。
地球温暖化対策として、国際的に省エネルギー化への取り組みは強まっている。国内でも「建築物省エネ法」や「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」など、政府が主導し「ビルの省エネ化」を推進する動きは活発化している。しかし、現実的には躯体(くたい)や素材などの構造体としての省エネ化が必須となることから、オーナーなどへの負担が大きく、こうした省エネ型建築が一気に広がるのは望めない状況である。
こうした中でカギを握るとみられているのが、既存の設備を利用しながら省エネ化を進める取り組みである。具体的には、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用した高度なBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)の実現がポイントとなるとみられている。
フランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は2016年9月26日、シンガポールにおいて、アジアで初となる業界横断型のユーザーイベント「Life Is On Innovation Summit」を開催(関連記事)。その中で「ビルのエネルギー効率化を実現するためにはIoTが大きなカギを握る」ということを強調した。
ビルのエネルギーの80%が無駄に消費
シュナイダーエレクトリックは日本ではUPS(無停電型電源)などデータセンター向けのソリューションで有名だが、グローバルではBEMSなどを含めたビル向けのソリューションが全売上高の約半分を占める。これらの豊富なビル制御の実績などを踏まえた上で、シュナイダーエレクトリックのCEO(最高経営責任者)兼会長であるジャンーパスカル・トリコア(Jean-Pascal Tricoire)氏は「82%のビルのエネルギーコストが無駄に消費されている」と指摘する(図1)。
図1 電力の効率的な活用の潜在能力を業界別に比較した図。産業分野ではエネルギーの42%が最適に活用されているのに対し、ビル分野では18%しか使われていない(クリックで拡大)出典:シュナイダーエレクトリック
トリコア氏は「ビル分野では従来、ビルを建築することだけを考えて、ビジネスを展開してきた。しかし、ビルのライフサイクルコストを考えた場合、その80%以上が販売後に生まれている。正しいライフサイクルを考えた場合、省エネ化に対してどういう取り組みをするか、ということが重要なことは理解できるはずだ」と述べている。
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