エネルギー消費が“正味ゼロ”のビル、実現にはまず50%の省エネが必須へ:省エネ機器(5/5 ページ)
2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現する政策目標が掲げられる中、経済産業省では、エネルギー基本計画に明記されたZEBの政策目標達成のために、ZEBロードマップ検討委員会を開催。ZEBの定義やロードマップなどの検討内容を発表した。
ノウハウ確立についてはケーススタディを実施
ノウハウが確立されていないという課題に対しては、ZEBロードマップ検討委員会では、ケーススタディとして実際の建造物のZEB化を実施。対応の方向性について検討した。実際に事務所、学校、ホテルの3用途を対象とし、ZEB Readyを実現するための設計仕様と初期投資コストについて、実証を行った。
その結果、いずれの用途においても、ZEB Readyは実現可能で、高断熱化や設備の高効率化に必要な設備・材料コストについては建築コストの総額の2〜5%にとどまったという(図7)。
ただ、建築計画の見直しや、運用後の実績管理や計測設備の追加、人件費の増加、関連して必要な太陽光パネルや蓄電池の維持コストなどが追加費用で発生すると考えられ、これらを含めるともう少しコストは増えることが見込まれている。
これらのケーススタディの成果なども含めつつ、ZEB化のノウハウを確立・共有するために「設計ガイドライン」を策定することなども提案している。
動機づけにはZEBの広報やテナントへのインセンティブも
動機付けの問題については、広報活動の強化を進める他、メリットを感じにくいテナントへのインセンティブ付与なども検討していくという。その他、高性能化や低コスト化のための技術開発と標準化などについても取り組みを進めていくことを明らかにしている。
ZEB実現のロードマップを策定
これらの課題と対応策を含めて、ZEBロードマップ検討委員会では、具体的な活動を示したロードマップを策定。2015年度中に、今回の提案をもとにZEBの定義を確立し、2016〜2018年度にはZEBの設計ガイドラインの策定と普及を進めるという。また、テナントへのインセンティブ付与や、技術の標準化などについても2016〜2018年度に進めていく方針だ。これらのローぼマップに沿った具体的な活動を推進することで2020年以降にZEBが普及する基盤を作り上げていく(図8)。
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