2020年に消費エネルギー「0」のオフィスビルを建てる、既築ビルでは半減に成功:スマートオフィス(2/2 ページ)
オフィスビルの省エネを進め、太陽光発電と組み合わせると、ビルの消費エネルギー量が実質ゼロになるはずだ。2030年には国内の新築ビルでも、このような取り組みが始まる。鹿島は10年早く2020年に実現する計画だ。さらには新築よりも難しい既築ビルにも適用する。鹿島が採り入れた4つの技術を紹介する。
4種類の新技術で実現
空調や照明を手動で調整するだけではこれほどの効果は得られない。自動化が必要だ。加えて極端な省エネでビル内の快適さが損なわれるとしたらZEBの普及は遅くなるだろう。
鹿島は4種類の新技術を導入することでZEBの自動化と快適さを維持する手法を確認した(図4)*4。まずは「人密度検知人感センサ」だ(図5)。そもそも人が居ないところに明かりや空調は不要だ。熱電変換を利用したサーモパイル人感センサーを天井面に配置し、人密度を3段階で判別する。判別結果を空調や照明の出力と結び付けた。
*4)鹿島は4社、1大学と協力して新技術を導入した。アクティブ人感センサーによる空調・照明制御ではオムロンと、LEDを用いた明るさ感演出照明ではパナソニックと、潜顕分離空調システムではダイキン工業と、スマート電力充放電制御では日立製作所と協力した。千葉大学大学院工学研究科の教授の川瀬貴晴氏が運用段階の検証を進めた。実証研究全体は、NEDO(新エネルギー開発機構)の「省エネルギー革新技術開発事業実証研究(電力需給対策)」として実施した。
次は「明るさ感演出LED照明」だ。天井照明の明るさを引き下げ、手元照明を加えるだけでは十分な省エネにならない。そこで人の明るさ感覚が高まるよう照明の配光を工夫した。これにより、ベース照度を標準的な照度の半分程度でしかない300〜350lx程度に抑えても、室内の明るさ感が保たれるという。
天井面から吊下げたアクリル製の羽根が、導光板・拡散板・反射板の効果を兼ねて明るさ感覚の向上に役立っている(図6)。
空調の工夫は多岐にわたる。まずは人密度検知人感センサによって、室内エリアごとの出力を制御することだ。今回はさらに冷房時に室内設定温度を高く、暖房時に低く設定しても適度な湿度を保持する仕組みを外気処理系統に組み込んだ。特に冷房時においては設定温度が高めであっても体感温度が低くなる。加えて吹き出し口にアルミニウムを利用して、放射による空調を試みた(図7)。
再生可能エネルギーも利用
以上が今回利用した省エネルギー技術の内容だ。KIビルでは空調についてのみ、再生可能エネルギーの利用も試みた。
出力20kWの太陽光発電システムと、容量14kWhのリチウムイオン蓄電池をZEB配電盤に接続した他、系統電力、出力20kWの空調ともZEB配電盤経由でつないだ(図8)。系統電力の使用量を最小限にするアルゴリズムを組み込み、蓄電池の容量の有効活用(SOC)も試みた(図9)。必要な蓄電池容量に上限があることが分かったという。
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