1億200万画素で近接目視超え! AI×ドローンも活用する富士フイルムのインフラ点検DX:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025(1/3 ページ)
社会インフラの老朽化と点検作業員不足が深刻化する中、富士フイルムはAIによる自動ひび割れ検出「ひびみっけ」、省人化を実現する「トンネル点検DXソリューション」、そして1億200万画素カメラ搭載ドローン――3つの技術で維持管理の常識を塗り替えようとしている。
富士フイルムは、「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025」の構成展「第19回 インフラ検査・維持管理・更新展」(会期:2025年7月23〜25日、東京ビッグサイト)に出展し、高画素カメラとAIを組み合わせた独自のインフラ点検DXソリューションを紹介した。橋梁(きょうりょう)やトンネルなど社会インフラの老朽化が大きな社会課題となる中、効率化と精度向上を両立する同社の技術に注目が集まった。
AIが“ひび割れ”を瞬時に検出、写真だけで点検効率を劇的に変える「ひびみっけ」
インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」は、橋梁やトンネルなどコンクリート構造物を対象に、撮影画像の合成と損傷(ひび割れ)の自動検出を行うソフトウェアだ。
日本では高度経済成長期(1955〜1973年頃)に道路橋やトンネル、河川、上下水道、港湾などの多くが集中的に整備された。そのため、2023年以降の20年間で、築後50年を超えるインフラの割合が加速度的に高まるとされている。
一方で、少子高齢社会の進展により、担い手となる点検作業員の不足が深刻化している。そのため、効率化/省人化と精度向上を同時にかなえる技術が求められている。ひびみっけは、こうした社会課題に応えるために開発されたDXソリューションだ。国の「点検支援技術性能カタログ」に掲載され、国土交通省のNETISでVE評価を取得している。
操作はシンプル。対象構造物をデジタル一眼カメラやドローンで撮影し、画像をフォルダにまとめて、フォルダごとアップロードするだけ。30枚程度ならおよそ1時間で解析が完了し、ExcelやDXF、合成画像など必要な形式で出力できる。
従来のひび割れ点検は、高所作業車を用いた近接目視と野帳作成を経て、調書をまとめる必要があった。ひびみっけを使えば、撮影画像が野帳の代わりとなり、調書もシステムが自動で生成するため、大幅な省力化が可能だ。富士フイルムによれば、ひび割れ検出作業で最大9時間の効率化を実現したという。
効率化をさらに後押しするため、2024年5月から有効画素数1億200万の中判ミラーレスカメラ「GFX100S」のレンタルサービスも開始した。高精細画像によって広範囲を少ない枚数で撮影でき、微細なひび割れの検出精度も高められる。鹿児島県の高速道路トンネルでの実証では、従来の一眼カメラに比べて約4倍の速度で撮影したと報告されている。
ブース担当者は「高速道路のトンネルなど、短時間で作業を終えなければいけない場所では効率的に撮影することが重要。画像解析費用は通常の4倍になるが、効率化や精度向上を考えれば十分検討に値する」と語った。
富士フイルムのAIを活用したひび割れ診断技術は、さらに進化を遂げ、社会実装の場を広げている。2025年4月8日には、JR東日本と共同で新幹線トンネルのひび割れを自動抽出するAIを実用化したと発表。ひびみっけの画像解析AIをベースに、JR東日本の新幹線トンネル検査に最適化し、2025年度から全面的に導入される予定だ。
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