大林組が金属系の建設3Dプリンティング技術を開発 技研で大型モックアップ披露:デジタルファブリケーション(1/3 ページ)
大林組は、金属を素材とする3Dプリンティング技術を開発し、コンピュテーショナルデザインで自動生成した3Dモデルをベースに座面付きの大型オブジェを制作した。これまでセメント系が多かった建設用3Dプリンタで、新たに金属系素材が扱えるようになり、建設業界でデジタルファブリケーションの用途が広がることになる。
大林組は2025年5月20日、炭素鋼やステンレス鋼を造形する金属3Dプリンタを開発し、大型モックアップ「The brænch(ザ ブレンチ)」を製造したと発表した。
金属3Dプリントの第一弾となるThe brænchの名称は、「Branch(枝)」と「Bench(ベンチ)」を組み合わせた造語で、植物のような柱と座面、屋根から成るオブジェとなっている。東京都清瀬市の大林組 技術研究所に設置した。
大林組の建設3Dプリンタ開発は、2035年までの第二段階に移行
大林組は2014年から建設3Dプリンタ(3DCP)の開発に着手し、第一段階として3DCP技術の確立と社内施設での実証を重ね、2017年にモルタルアーチ橋、2019年にシェル型ベンチ、10平方メートル超えの建築物「3dpod」を制作してきた。2022年以降は外部顧客への提供を見据えた第二段階に移行し、横浜シンフォステージの外構、2025年3月に生駒山遊園地のチケット売り場を製造。現在は、2035年までに3Dプリンティング技術を建設業界に広く行き渡る普遍的なテクノロジーとすべく、研究開発を進めている。
しかし、従来3Dプリンタのマテリアルで使用してきたセメント系だけでは、将来の完全自動化を考慮すると制作物が限定されるため、条件に応じて材料の複合や使い分けも必要となる。そこで2022年から市販のロボットアームをベースに、金属3Dプリンティング技術の開発をスタートさせた。
金属の加工は一般的に、金属を溶かして型に流し込み冷やして固める「鋳造(ちゅうぞう)=Cast iron」、叩(たた)いて制作する「鍛造=wrought iron」の2種類。鋳造は大量生産向きでバリエーションを増やせず、小ロットは逆に高コストとなる。鍛造はオーダーメイドに適し、形状の自由度はあるが、職人技がなくては作れない。
その点、3Dプリントは3Dデータから有機的な形状でも、型枠不要で複数を作れる優位性がある。
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