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BIMで未来を切り拓いた地方ゼネコン 盛岡の「タカヤ」が描く、次世代の建設プロセスとキャリアビジョン建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(9)(2/4 ページ)

筆者は第6回「現場BIMの活用例 Vol.2」で、「ゼネコンはフロントローディングで、BIMパラメーター情報を登録し、専門工事会社と連携する『データ主導型のワークフロー』を構築するべきではないか」と提言した。この視点は、特に地方ゼネコンにおいて、生産性向上と技術革新の鍵となるだろう。今回は、具体的な事例として、岩手県盛岡市のタカヤによるBIM活用を紹介する。その挑戦は、地方ゼネコンのBIM活用の可能性と、建設プロセス変革への道筋を示している。

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充実したBIM推進体制と人材育成

 タカヤのBIM推進体制の特徴は、明確な役割分担を持った専門チームの存在だ。2019年に設置した4人のチームは、それぞれの専門性を生かしながら、全社でのBIM展開をけん引している。

 構造設計のバックグラウンドを持つ伊藤慎吾氏が立ち上げ当初から参画し、BIM推進の方向性を定めながら、特に構造分野でのBIM活用を主導。伊藤氏はチーム全体を見渡す立場として、今後のBIM推進が進むべき方向性も検討している。

 意匠設計の経験を持つ安東由吏江氏は、推進チーム立ち上げ時から専属メンバーとして参加。当初は何から始めるべきか手探りの状態だったが、ロードマップを作成し、意匠的な観点からのテンプレート作成、ファミリ作成、LODのルール設定などを担当した。教育関係にも当初は携わっていたが、現在は及川結花氏にバトンタッチしている。

 2021年に参加した及川氏は、それまでの住宅のインテリアコーディネートの経験を活用しながら、今ではファミリ作成や基礎トレーニング、新入社員のトレーニングも担っている。また、BIMを活用した動画の作成も手掛けている。

 最も新しいメンバーの高橋朋彦氏は、2022年から参画。以前は異なる3Dソフトを使用して完成イメージを中心に作成していた経験を駆使し、現在はBIMを使用したビジュアルを制作。中でもRevitとTwinmotionの連携を中心に、新しい機能の調査や検討も行っている。

タカヤ 代表取締役社長 細屋伸央氏(写真左側の中央)とBIM推進チーム
タカヤ 代表取締役社長 細屋伸央氏(写真左側の中央)とBIM推進チーム 提供:M&F tecnica

BIM活用の現状と課題

 BIMの導入過程では多種多様な問題に直面した。BIM推進チームの安東氏は、「テンプレートやファミリの準備が大変だった。いったん完成しても、使い始めると不具合などが生じ、何度も作り直した。BIMの仕組みを把握するにつれ、最初のファミリや構成が未熟だったと感じる」と当時を振り返る。

 ただ設計から施工への展開では、現段階でも課題が残っている。安東氏によると「施工管理者の中には、BIMモデルの可能性に気付きはじめている者も出てきているが、現状は設計レベルのLODなので、施工図レベルの検討までは難しい」とのことだ。

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