建設DX実現までの指標となる“変革レベル”と、可能性を秘める生成AI【最終回】:建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(7)(2/3 ページ)
連載最終回となる今回は、建設DXをどう進めていけばいいか分からない人の助けとなる“変革レベル”と、DXの要素技術として昨今注目を集めている生成AIについて解説します。
ICT企業との連携が重要ポイント
「デジタル技術で、ビジネスモデルを変革しよう」と目標を掲げたものの、建設業界はICT導入が遅れているとされる業界。DX推進を任された方々は、自社でDX専門部門を立ち上げるべきか?DX人材はどこから集める?育成はどうする?などなど、頭を悩ませているのではないでしょうか。
ここ数年、建設系メディアでよく目にするのが、建設会社とICT企業のコラボレーションです。建設会社は、ICT企業との協業や協創を通じて、最新の技術やノウハウを取り入れることで、企業全体のデジタル化を推進することができます。ICTの導入と定着、その先にある建設DXの実現に関しては、建設会社単体よりもICT企業との連携による推進が早道といえるでしょう。
また、「建設RXコンソーシアム」のように、ゼネコン企業群と複数のIoT、ロボティクス、ICT企業のコラボレーションで技術開発が進められているプロジェクトも複数出てきており、コラボレーションや協業は業界全体の動きとなっています。今後も、さまざまな協業や協創によって新技術や新製品が生まれることを期待してやみません。
AIが将来の強力なパートナーに
冒頭でも触れたように、AIが建設DXの実現で重要な技術となりつつあります。先に取り上げた「建設現場における建設DXの変革レベル」でも、AIの活用が重要なポイントになると考えています。
AI技術の中でも、特に注目を集めているのが「生成AI」です。一般的なAIは特定の作業や処理を自動化することを得意としていますが、生成AIは大量データのパターンや関係性を学習し、テキスト、画像、動画などのコンテンツを新たに生成する技術です。
読者の中には生成AIの代表的なサービスである「ChatGPT」を体験された方も多いのではないでしょうか。使ってみると、その柔軟性の高さに驚かされますが、使いこなすには適切な指示文(プロンプト)が重要になりますし、毎回正しい答えを得られるわけでもありません。それでもこの新しい技術は、建設業界に大きな変革をもたらす可能性があります。業界や企業が蓄積してきた業務データを、生成AIに投入することで、その業界や企業に適したシステムを構築することも可能だからです。
建設DXの変革レベルに当てはめると、生成AIは既存情報を対象とした情報収集や要約においてレベル2から活用ができます。特に生成AIの真価が発揮されるのは、レベル3、レベル4で、複数にまたがるシステムのさまざまな情報群を集約し、意思決定を支援するシーンでしょう。生成する対象は、帳票などのドキュメント類だけではなく、イラストや簡易的なBIMデータなども含まれます。
生成AIを活用した多様な取り組みが情報発信されていますが、建設業界では成功モデルに達したものはまだ少ないように思われます。ただ、生成AIの進化の速度を考えると、業務の中核に生成AIが存在する日は、それほど遠い先のことではないでしょう。
さまざまな取り組みの中で、個人的に生成AIの活用が期待できるものを3点挙げてみました。
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