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デジタルツインの“地中可視化”で日立ら4社が連携 道路メンテナンスの最前線を紹介Hitachi Social Innovation Forum 2024 JAPAN(2/3 ページ)

インフラの老朽化や激甚化する災害に対応するため、上下水道管路の耐震化や道路の無電柱化が全国で進められている。しかし、地下埋設物のインフラ工事は地下既設管などの把握が不可欠で手間や時間がかかり、インフラ事業者は慢性的な人手不足のために工事進捗で支障を抱えている。こうした課題解決に向け、日立製作所とNTTインフラネット、アイレック技建、応用地質の4社が手を組み、新技術を用いた地中可視化サービスの提供に取り組んでいる。

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地下インフラ調査を効率化する最新技術

 NTTインフラネットは、NTTグループの地下設備を一元管理している企業だ。管理する通信用管路は63万キロ、通信用トンネルは654キロと膨大な地下インフラの維持管理を担っている。

NTTインフラネット 古賀満氏
NTTインフラネット 古賀満氏

 そのため、古賀満氏は「長大な設備を抱えているため、人手不足や図面確認作業の手間など社会インフラの維持管理の課題にまさに直面している」と訴える。中でも無電柱化は、埋設物調査や試掘などの現状把握に時間を要し、施行中に図面位置と異なる埋設物が見つかり、設計変更や手戻りが多発している。数百メートルの整備に平均7年程度かかっており、維持管理業務の効率化が求められている。

 そのため、NTTインフラネットでは、地下空間を3Dデータ化し、工事計画の共有などに取り組む「Smart Infra構想」の実現に注力している。地下状況をBIM/CIMデータで管理し、建設プロセスの各段階に導入。そこに通信、電気、ガスといった事業会社がそれぞれ持っている図面データを一元管理することで維持管理の効率化につなげていく。

事業者間でデータをシェアし、インフラ維持管理の効率化を目指す「Smart Infra構想」
事業者間でデータをシェアし、インフラ維持管理の効率化を目指す「Smart Infra構想」
「Smart Infra構想」の目指すべき姿
「Smart Infra構想」の目指すべき姿

 異なるインフラ事業者との連携では、工事会社に義務付けられているインフラ企業への埋設物情報の照会を効率化する「立ち合い受付Webシステム」を実装している。登録しているインフラ企業に、工事場所での埋設物の有無や立ち会いが必要なレベルのものかをWeb上で回答してもらう仕組みで、埋設物照会だけで年間数十万件の手続きを電子化した。

 古賀氏は「デジタル技術による管理分野をさらに広げ、将来の地下インフラ事業ではデジタルツインによる設備保守があるべき姿だ。そのためには設計・工事段階でのBIM/CIMモデルの構築が必要となる」と話す。その上で「3Dモデルを構築するには、詳細な既設埋設物のデータが必要になるので、非破壊探査による高精細な埋設物の調査が重要となる」と解説を加えた。

 非破壊検査の技術に長けているのがグループ会社のアイレック技建だ。主な事業はライフライン設備を非開削で構築する非開削推進事業をはじめ、マンホール/ヒューム構造物の点検/リニューアル、非破壊探査事業として探査機器の提供にも携わっている。

 非破壊探査機器は「エスパー」シリーズとして、現場の探査深度や対象に合わせた機器をラインアップ。トータルステーション(TS)などの地上の3D化技術と組み合わせて、BIM/CIMモデルを作成できる環境を整備している。

アイレック技建 押田博之氏
アイレック技建 押田博之氏

 また、現地測定データをリアルタイムに確認しながら、指示やサポートができる「非破壊探査業務の遠隔支援」にも取り組み、手戻りなく現場で省力化となる作業体制を敷く。アイレック技建で本部長を務める押田博之氏は、「4社で持ち合わせている技術や経験、ノウハウを最大限生かせる体制づくりに貢献し、地下インフラ設備の整備を効率化したい」と意気込みを語る。

アイレック技建が提供する非破壊探査機機
アイレック技建が提供する非破壊探査機機

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