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AutoCADの作業効率化ですぐに“効く”! 初心者もできる自動化テクニックAutoCADの時短術をレクチャー

製図作業の効率化や高度化に向けて進化を続けるCADソフト「AutoCAD」。最近では各種AI機能の取り込みも急ピッチで進んでいる。もっとも、従来の機能にも業務効率化に大きく貢献するものは少なくない。CADインストラクターの芳賀百合氏に、AutoCADによるCAD作業をすぐにでも“時短”できる技を聞いた。

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CADオペレーターの“時短”のためのテクニック

 建設業界を含むあらゆるモノづくりの“縁の下の力持ち”と呼べる存在が、設計者やデザイナーの指示の下で各種図面を作製/調整するCADオペレーターだ。施工開始日までに図面が用意されているのも、彼ら/彼女らの残業などによる隠れた努力があってこそだ。

芳賀 百合 / Yuri Haga
芳賀 百合 / Yuri Haga 初心者には分かりやすく指導し、上級者には1ランク上の使いこなし方を教えるインストラクターとして活動中。もともと土木設計事務所のCADオペレーターでAutoCAD歴は15年以上。Autodesk製品のユーザーコミュニティー「AUG-JP」のイベントでスピーカーも担当。『はじめてのAutoCAD』『AutoCAD 完全ガイドブック』『だれでもできるAutoCAD [土木編]』など、AutoCADに関する著書を数多く執筆している

 しかし今、大きな問題となっているのが残業規制の適用猶予が2024年3月21日で終わった“2024年問題”だ。建設業界でも、36協定による時間外労働として単月100時間以上、年720時間以上は認められなくなった。

 人手不足が常態化している建設業にとっては頭を抱える問題だ。とはいえ、現状を放置していると多忙さに起因するミスの増加による図面品質の低下も予見される。最悪の場合、期日までに図面が間に合わないことも考えられる。

 現実解が設計業務の効率化だ。大塚商会とオートデスクは、初心者でも実践できる「AutoCAD」の作業効率化テクニックを解説するオンラインセミナー「『AutoCAD』時短マスター 初心者でもできる自動化への道」を2024年10月10日に開催する。

 本イベントの講師でAutoCADに関する著書を数多く執筆している芳賀百合氏に、設計業務を効率化するAutoCADのテクニックを伺った。

AutoCAD時短マスターのコンセプト
AutoCAD時短マスターのコンセプト 提供:芳賀百合氏

繰り返し作業や大量データ入力の手間を抜本的に効率化

 芳賀氏によると、今回のセミナーでは「ツールパレット」と「スクリプト」の機能の賢い活用法と効果を分かりやすく解説するという。「CADソフトによる作図では、同じ作業の繰り返しや大量のデータ入力が発生することも多い。手作業のためミスも生じやすく、効率も低下しがち。そこで、ツールパレットの活用による繰り返し作業の自動化やスクリプトによる大量データの効率的な処理といった技を伝授する」(芳賀氏)。

 ツールパレットは、「ブロック」「コマンド」の登録とクリック操作での呼び出しが可能なパネルのことだ。表示タブ/パレット/ツールパレットをクリックすることで表示できる。

 ツールパレットによって作業がどう効率化されるのか。一例として芳賀氏は、図面に中心線を描くケースでのメリットを挙げる。

 中心線を描くに当たってまず必要なのが、作業すべき画層を探すことだ。ただ、図面には数十もの画層が用いられることも珍しくなく、特定だけでも一苦労。基本設計から実施設計への移行時などには利用すべき画層がまだ存在していないことも多く、新たな画層作成が求められることもある。

 画層を用意できたら「線種」を選ぶことになるが、使いたい線種がファイルに用意されているとは限らない。その場合はリボンの「線種」プルダウンメニューで「線種のロードまたは再ロード」画面を呼び出し、使いたい線種を読み込む作業が発生する。

オブジェクト登録で作業環境を即座に用意

 これでようやく目的の画層で中心線を描く準備が整ったが、厄介事はまだある。対象を選択してリボンの「中心線」をクリックすると中心線が描かれるが、尺度が適切でないために長さが足りなかったり、破線が実線として表示されたりするなど、狙い通りに作図されないことも多々ある。その場合は「プロパティパレット」を呼び出して「線種尺度」などを見直さなければならず、そこでも時間がかかる。

 こうした一連の作業の手間を格段に削減するテクニックとして芳賀氏が紹介するのが、「ツールパレットへの、作図したオブジェクトの登録」だ。

 オブジェクトの登録は、ツールパレットにオブジェクトをドラッグ&ドロップするだけなので極めて簡単だ。登録されたオブジェクトをクリックすることで、ファイルを問わずオブジェクトに設定された画層や線種、尺度などで作業を開始できる。尺度などは再設定が必要なこともあるが、一から全て選択/設定するよりもはるかに効率的だ。「ツールパレットにはパターン登録した『ハッチング』のオブジェクトの登録も可能で、同様に簡単に呼び出せる。ブロックを登録している方は多いが、オブジェクト登録のメリットはあまり知られておらず、利用している方は多くない。登録自体は極めて簡単なので、意識して活用してはいかがだろうか」(芳賀氏)。

ツールパレットの活用
ツールパレットの活用 提供:芳賀百合氏

 通常の操作とツールパレットを利用した作業で中心線の作図に要した時間を芳賀氏が比較したところ、前者が3分なのに対して後者は25秒となり、単純計算で約7倍の作業効率化ができたという。

ツールパレットによる時短
ツールパレットによる時短 提供:芳賀百合氏

スクリプトによって作業自動化でミスも一掃

 2つ目のスクリプトは、特定の動作を指示するテキストデータによる作図作業の自動化機能だ。スクリプトの効果的な活用シーンの一つとして芳賀氏が挙げるのが、線分や曲線を自由に描けるポリラインの作図時だ。

スクリプトの活用例
スクリプトの活用例 提供:芳賀百合氏

 「X方向に値を入れて円とポリラインを作図する」場合、手作業では次のようになる。

 1.配置すべき全ての円を横軸が0の位置に作成

 2.移動量を計算し、全ての円をその位置にマウス操作で配置

 3.「ポリライン」ボタンをクリックし、円の中心点をクリックしてポリラインを作図

 文章にすると簡単そうだが、実際の作業は面倒だ。円の作図には「『円』ボタンのクリック」「円の中心点のクリック」「円の半径を入力」を円の数だけ繰り返さなければならない。ポリラインの作図時にも、配置し終えた全ての円の中心点に対するクリック操作が必要だ。

 円の配置はAutoCADへのデータ入力でもできる。しかしデータが膨大になるほど入力ミスも生じやすくなる。移動量計算が複雑な場合、計算自体に時間を取られてしまう。だが、スクリプトを利用すれば作業を次の簡単な作業に置き換えられる。

 1.Excelに「円の作図」のためのコマンドを入力

 2.入力したコマンドをコピーし、AutoCADに貼り付けて実行

 3.Excelに「ポリラインの作図」のためのコマンドを入力

 4.入力したコマンドをコピーし、AutoCADに貼り付けて実行

 芳賀氏は、「スクリプトの利用によって円の配置や中心点のクリックなどの作業を一掃でき、移動量計算も自動化/効率化されて入力ミスもなくなる。円の数が多くなるほど、より大きな効果が見込めるテクニックだ」と語る。

複数のファイルに分散した図面の集約も可能!

 スクリプトを活用することで、ファイルが複数にわたる図面の一括処理/集約も可能になる。断面図などは作業対象が多数のファイルに分散しているケースも珍しくない。スクリプトを用いればそれらを1つのファイルに集約でき、作業効率が大幅に高まる。「手作業でも集約は可能ですが、どこまで選択して実行したかを忘れがち。手作業によるミスのリスクもあるが、スクリプトならそうした心配はない」(芳賀氏)。

大量の図面を一括処理できるスクリプト
大量の図面を一括処理できるスクリプト 提供:芳賀百合氏

 ツールパレットと同様に、通常の操作とスクリプトによるポリラインの作図に要した時間を芳賀氏が比較したところ、前者が3分35秒なのに対して後者は2分となり、1.8倍も作業が効率化された。

スクリプト活用による時短の効果
スクリプト活用による時短の効果 提供:芳賀百合氏

 芳賀氏によると、AutoCADはCADオペレーターの要望に応えて作業効率化のための機能強化が続けられてきたという。その“最先端”のツールが「AutoDesk AI」だ。

 2024年3月にリリースされた「AutoCAD 2025」「Auto CAD Plus 2025」は、配置や置換の機能を備えた「スマートブロック」の「ブロック変換」を通じて図面内の要素を基にブロックを素早く作成できる。選択した線や点などのジオメトリを検索し、一致するオブジェクトを全てハイライト表示してブロックのインスタンスに変換することも可能だ。AIによるワークフローの自動化も現実のものとなりつつある。芳賀氏は、「現場を見ると、十分に活用し切れていない機能も少なからず存在する。セミナーではそれらの活用のヒントを紹介し、業務効率化を後押ししたい」と話す。

 大塚商会とオートデスクは今回のセミナーに続き、2024年12月に「アクションレコーダ」と「データ書き出し」の使いこなしを支援する第2弾のセミナーの開催も予定している。両セミナーとも文字では伝わりにくい作業方法を、画面操作を通して提示する。

 CADオペレーターの業務を効率化するための貴重な“気付き”が得られる、またとないイベントになりそうだ。

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提供:株式会社大塚商会
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月11日

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