オープン化で次世代の「ビルOS」構築 パナソニックと福岡地所が実証実験:スマートビル(1/3 ページ)
パナソニック エレクトリックワークス社と福岡地所は、福岡市内で「次世代オープンビルプラットフォーム(ビルOS)」の実証実験を行っている。ビルOSを活用して管理スタッフの位置情報データAPIを生成。このデータをもとに業務管理アプリを開発して有効性を検証する。建物内の設備や人などの情報を統一的なAPIにより外部に提供する、新たな建物モデルの構築を進める。
パナソニック エレクトリックワークス社は2024年2月9日、福岡県福岡市にある天神ビジネスセンターで、福岡地所とともに「次世代オープンビルプラットフォーム(ビルOS)」の実証実験を行うと発表した。ビルOSを活用して管理スタッフの位置情報データAPIを生成し、このデータをもとに業務管理アプリを開発して、その有効性を検証する。実証期間は2023年12月1日〜2024年3月31日まで。
両社は実証実験を通じて、建物内の設備や人の情報など、多様な要素を統一的なAPIとして外部に提供する新たな建物モデルの構築を進める。将来はビル内のAPIをオープン化し、外部のアプリ開発者や入居者が自由にアクセスできるようにすることで、建物利用者の利便性を高めるとともに、建物自体や周辺エリアの価値向上を目指す。
2026年には実際の建物への実装を目指し、今後、さらなる実証実験やアプリコンテストを実施する計画だ。実用化されれば、福岡地所の既存物件へも順次展開していく。
オープンAPIで「自律的に更新されていく建物」へ
建物は空調や照明、エレベーターなどのさまざまな設備を備えている。非住宅向けに導入が進むビルオートメーションシステム(BAS)は、これらの設備を一元管理して建物の高機能化につなげるシステムだ。一方でBASは、建物全体管理によるシステムの大規模化と、システム構成が建物ごとや設備ごとに完結している点から、機能の拡張や短い周期でのアップデートなどが難しいとされている。こうした課題を解決するのが、近年注目されるビルOSだ。
ビルOSは建物内の設備やシステムのデータを収集し、蓄積、連携する機能を備える。建物の各設備が保有するデータや制御などの管理ポイントをクラウド上で統合管理し、データを利用したサービスの提供や、遠隔監視、複数拠点の一元管理などを可能にする。
両社が今回のプロジェクトを通じて目指すのは、利用者と開発者のコミュニティ形成により、自律的に建物が更新されていく環境づくりだ。
ビルOSを活用して建物内の各機器のインタフェースをオープン化することで、外部のソフトウェア開発者でも、ビル内の設備をコントロールするアプリを開発可能にする。開発したアプリは、ビルの管理者や入居者などの第三者がアプリストアから自由にダウンロードでき、ビル管理を効率化したり、新たなビルの使い方を発見したりして、快適なビルの利用につなげてもらう。アプリの開発者と利用者のコミュニティーを形成し、利用者のニーズをダイレクトに得られる仕組みも構想している。福岡地所 建築部長の田代剛氏はオープンAPIの現状について「スマートフォンでは既に実現しており、クルマでも活用が進みつつある。建物にも近く実装されていくだろう」と述べた。
この仕組みは2026年度の実装を目指しており、2023年度には実証実験を通じて、福岡地所が管理する建物をベースに課題の抽出やサービスの有効性の検証を行っている。2024年度には外部事業者を念頭に置いたサービスを検討し、2025年度にはサードパーティーアプリのコンテストを実施する計画だ。
次世代オープンビルプラットフォームの発起人の1人で、プロジェクトのアドバイザーを務める荒井真成氏は「これまで米国や中国、インド、ヨーロッパなどで複数のスマートビルのプロジェクトに関わってきた。いずれも投資額は大きい一方、当初想定したような成果は出なかった。この問題の解決策は、皆がアイデア持ち寄ることができるプラットフォームの構築にあると考えた」と強調する。今回の取り組みでは、建物内のさまざまな情報をオープン化することで、アプリ開発に参加するハードルを緩和する。さらに統一的なAPIして提供することで「1つのアプリを作れば違うビルにも適用できる世界を目指している」(荒井氏)と説明した。
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