落合陽一氏率いるピクシーダストの透明吸音材がCESで受賞、“構造で吸音”を評価:材料技術(2/2 ページ)
ピクシーダストテクノロジーズは、東京都内でメディア向けラウンドテーブルを開き、吸音材「iwasemi(イワセミ)」シリーズの展開について紹介した。
iwasemiシリーズとは?
国内の音響メタマテリアル市場において、ピクシーダストテクノロジーズは初めて音響メタマテリアルを活用した製品の量産/量販を実現した企業(同社調べ)だという。その製品がiwasemiシリーズだ。同社 iwasemi事業部 開発統括の三浦和希氏は「音響メタマテリアル技術を活用した吸音材は3Dプリンタで製造することは容易だが、複雑な構造だと既存の射出成形設備などで量産することは難しい。当社ではシンプルでありながら吸音性を発揮する構造を開発することで受託製造会社の射出成形設備での量産を実現している」とコメントした。
また、同社の落合氏は「当社では(量産に対応する)シンプルな構造で音響メタマテリアルの特許を取得することで競争力を確保している」と強調する。
iwasemiシリーズは「iwasemi HX-α」「iwasemi SQ-α」「iwasemi RC-α」といった3種の吸音材から成り、シリーズ累計の販売枚数は2万枚を超えている。なお、iwasemiの名称は松尾芭蕉が夏の立石寺(山形市山寺)で読んだ句「閑さや岩に染み入る蝉の声」に由来している。
iwasemi HX-αはピクシーダストテクノロジーズとイトーキの共同開発品だ。2022年7月に発売の製品でポリカーボネート樹脂を材料に採用している。本体サイズは幅210×奥行き182×高さ40mmで、重さは225g。取り付け方法は粘着テープあるいはマグネットを採用しており、カラーは6色となっている。
iwasemi SQ-αは2022年12月に発売の製品で再生原料が全体の60%を占めるABS樹脂を材料に採用している。本体サイズは幅225×奥行き225×高さ34mmで、重さは300g。取り付け方法はマグネットを採用しており、カラーは9色となっている。
iwasemi RC-αは2023年に発売の製品でバイオポリカーボネート樹脂を採用している。本体サイズは幅100×奥行き300×高さ20mmで、重さは210g。取り付け方法は粘着テープを採用しており、カラーは透明の1色となっている。
いずれも残響室法吸音率(500〜1000Hz)は0.8で生産国は日本だ。なお、iwasemiシリーズは人の会話帯域である500〜1000Hzに特化した吸音性能を持つ。
iwasemi RC-αに関しては、吸音性能と透明などの意匠性が評価され、「CES 2024」(米国・ラスベガス、2024年1月9日〜12日)の「CES 2024 INNOVATION AWARDS」を受賞している。同アワードは3000製品以上がエントリーしており、その中で受賞製品は522製品だ。ピクシーダストテクノロジーズのブースでは展示されたiwasemi RC-αに対して、来場者から「硬くて透明な素材で吸音ができる製品は見たことがない」「高い吸音性能を感じる」「素晴らしいデザインだ」などの好意的なコメントが寄せられた。
今後は、iwasemi HX-α、iwasemi SQ-α、iwasemi RC-αのグローバル販売を行うとともに、ラインアップの拡充を行う。併せて、車載、工事防音壁、家電、建築物などの領域で事業化。さらに、さらに、通気と遮音の両方を同時に実現する音響メタマテリアル遮音技術の研究開発も進めており、車載、電子機器/家電、建材などの領域で事業化する。加えて、固体振動抑制技術や軽量/薄型といった音響メタマテリアル技術の研究開発と概念実証(PoC)を多様な産業領域で行う。
iwasemiシリーズの生産について、落合氏は「グローバルにおける音響メタマテリアル市場の規模が2029年に約1186億円になることを踏まえても、国内には受託製造会社の射出成形工場がいっぱいあるので、今後も(iwasemiシリーズの生産は)ファブレスで良いかなと考えている。もちろん工場があっても良いが」と語っている。
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