米国の半導体製造「自国回帰」、ボトルネックは工場建設:建設にも高い専門知識が必要(1/3 ページ)
現在、20近くの半導体工場建設プロジェクトが進んでいる米国。政府は半導体製造の「自国回帰」に力を入れるが、この政策は、工場建設がボトルネックとなる可能性が出ている。高度なシステムが必要な半導体工場の建設には、専門的な知識が必要になるからだ。
半導体工場建設のための「研修制度」
SEMIの非営利部門として労働力開発プログラムに注力するSEMI Foundationでエグゼクティブディレクターを務めるShari Liss氏は、米国EE Timesの独占インタビューの中で、「半導体工場建設の複雑なニーズに対応することができる技術者を特定して確保するには、もっと注意を払ってよく考える必要がある」と語った。同氏のこのコメントは、他の専門家たちが2023年7月に、EE Timesに語っていた内容の繰り返しとなるもので、この時TSMCも、建設関連の問題から、米国アリゾナ州の工場の生産開始予定を、約1年遅れとなる2025年に変更せざるを得なくなったことを発表している。
Liss氏は、「SEMIは、米Arizona State University(アリゾナ州立大学)との協業により、建設労働者の研修制度を開発し、必要な能力を特定している」と述べる。
「われわれは、業界そのものに焦点を当て、工場をどのように運営していくか、そこでどのように労働者を確保するかという点に注力した」(Liss氏)
また同氏は、「アリゾナ州全体のさまざまな団体が、同州の労働力ニーズに対応すべく、SEMIとの協業に大きな関心を寄せている。さらに、同州のマリコパ郡コミュニティーカレッジ地区やアリゾナ州立大学など、アリゾナ州全体が、州内や業界内で技術者/オペレーターなどのニーズに対応できるよう研修制度を推進していく上で、パートナーシップを構築および開発することに関心を持っている」と述べている。
「われわれはメンバー企業との協業により、工場で必要とされるスキルを確立してきた」(Liss氏)
またSEMIは、アリゾナ州に登録研修制度を設立するための提案書を、アリゾナ州商業局(Arizona Commerce Authority)に提出している。Liss氏は、「こうした仕事の開発を支援するためのリソースが整えば、エコシステムは非常に迅速にプログラムを確立することができるはずだ」と述べる。
Liss氏は、「このような登録研修制度は、約1年をかけて設立し、18〜24カ月の間で実施されることになるだろう。アリゾナ州の多くの企業が、関心や関与、ニーズを示している」と述べる。
「しかしここ数カ月の間、ほぼ全ての対話の中で、建設関連の問題が次々と露呈した。われわれは現在、それが学術的なプログラムの観点から何を意味するのか、理解しようとしているところだ」(Liss氏)
建設のボトルネックにより、半導体製造のオンショアリングを迅速に実現するという米国の目標が、複雑化する可能性がある。
Liss氏は、「米国では現在、18件の重要な工場プロジェクトが進められているが、『CHIPS and Science Act』(CHIPS法)の資金提供を受けているものは一つもないようだ。というのも、米商務省のCHIPS Program Office(CPO)がまだ主要プロジェクトへの資金を提供していないからである」と述べる。SEMIの「Worldwide Fab Forecast」レポートによると、これら18の工場は2026年までに稼働開始が見込まれていて、そのうち6つは2024年内にも稼働が始まる予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.