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「PLATEAU」は他の3D都市モデルに比べどこが革新的か?2023年度内に200都市が3D化ATC Japan 2023(1/2 ページ)

国交省主導で、全国の自治体が進めている都市を3Dモデル化する「Project PLATEAU」――。全国の130都市が用途地域や標高、建物の構造や規模などの属性情報を持って3D化されている。都市計画を筆頭に、災害の避難計画や被災範囲、生活者のデータドリブン、ゲーム背景など、多様な活用が既に始まっている。

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 アルテアエンジニアリングは2023年8月24-25日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で、シミュレーション、HPC、データ分析など最新のソフトウェアテクノロジーに関するイベント「ATC Japan 2023」を開催した。今回のATC Japanでは、複数の会場で並行して講演やディスカッション、テーマ別のセッションとともに、協賛企業によるブース展示も展開した。本稿では、ATC Japan 2023の中から、国土交通省 都市局 都市政策課 デジタル情報活用推進室 課長補佐 兼 総合政策局 情報政策課 IT戦略企画調整官 内山裕弥氏による「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」の講演を紹介する。

 PLATEAUは、2020年に国土交通省主導でスタートした都市のデジタルツイン化プロジェクト。都市を3Dモデル化し、オープンデータとして公開することで、防災や都市計画、観光といった幅広い分野での活用を目指す。講演時点で既に、130都市で3Dモデルが構築されている。2023年度中には、さらに約70都市(市町村)の整備も予定されている。

ATC Japan 2023で講演する国土交通省 内山裕弥氏。デジタル庁 国民向けサービスグループ モビリティ班や東京大学大学院 工学系研究科 非常勤講師を兼任
ATC Japan 2023で講演する国土交通省 内山裕弥氏。デジタル庁 国民向けサービスグループ モビリティ班や東京大学大学院 工学系研究科 非常勤講師を兼任 筆者撮影

 内山氏は、都市の3D化で出遅れる日本でなぜProject PLATEAUが実現したのか、その理由とともに、3D都市モデルの活用例やさらに活用するための開発環境を解説した。

地方公共団体や民間企業と連携した都市のデジタルツイン化プロジェクト

 そもそもデジタルツインとは、現実世界に存在するものをデジタル化し、まるで現実世界の双子(ツインズ)のように仮想空間上に再現する技術のこと。建物や道路などのインフラを仮想空間に再現すれば、さまざまなシミュレーションが可能になる。高品質で都市計画に関わる施策検討が事前にできれば、事業費用や工期の削減にもなり、都市機能を高度化させたスマートシティーも実現する。

 PLATEAUでは、3D都市モデルの日本版として3Dデータを作り、オープンデータとして公開することで、スマートシティーにつながる都市計画の基盤づくりに役立てられることを目的としている。そのためには、オープンデータ化とデータの標準化が重要になる。なぜなら、都市の3Dデータが商用利用を含め、誰でも共通フォーマットで利用できるようになるからだ。

 国交省が構築していると思われがちなPLATEAUのデータだが、実はそのほとんど全てが自治体によって作られている。ただ、自治体には国交省が作ったデータモデルに従ってPLATEAUのデータを作ってもらわなければ、せっかく街を3D化しても、データが統合できなくなってしまう。PLATEAUには、その部分を補完する技術支援や環境整備もフォローされている。

内山氏が示したProject PLATEAUのスコープ。1:データ整備の高度化・効率化、2:ユースケースのベストプラクティス創出、3:オープン・イノベーション創出、4:地域の社会実装
内山氏が示したProject PLATEAUのスコープ。1:データ整備の高度化・効率化、2:ユースケースのベストプラクティス創出、3:オープン・イノベーション創出、4:地域の社会実装 提供:内山裕弥氏

シミュレーションと相性が良いPLATEAU

 PLATEAUは、GISデータで、単なる3DCGではなく、属性情報が格納されている点が他の都市3Dモデルとの一番の違いだ。属性情報とは、ジオメトリ(幾何形状)とセマンティクス(意味情報)が統合されている。PLATEAUでは、点の集合で構成された物体がビルであり、学校などの用途や耐火建築といった情報もパッケージしている。

 内山氏は「こういったデータ形式や構造で標準化された都市を対象とした3Dデータは今までなかった」と語る。そのため、PLATEAUを活用すれば、今までにない高度な解析が可能になり、今までできなかったアプリ開発も可能になるかもしれない。多くの情報を含んだPLATEAUのデータは、シミュレーションと相性が良い。多様な情報を含むPLATEAUのデータは、経済の視点からも注目されている。

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