激甚化する“土砂災害”から住民を守る、葉山町と応用地質が防災システム構築で実証:国土強靭化
神奈川県葉山町は、豪雨による土砂災害が発生した際に、早期に住民に警告して確実な避難行動につなげるため、応用地質のIoTセンサーをベースにした新たな防災システムを構築して有効性を検証する。
応用地質は2022年8月4日、土砂災害から住民を守る新たな防災システムの構築を目的に、神奈川県葉山町と連携協定を締結し、実証研究を開始すると発表した。
両者は、2022年8月4日から2024年3月末までに予定している実証研究を通して、応用地質が開発した「斜面変動検知センサー」と「土砂ハザードモニタリングシステム」を葉山町内の土砂災害危険斜面に設置し、土砂災害の予兆を早期検知する有効性を検証するとともに、予兆情報をもとに住民の適切な避難行動につなげる最適な周知方法の確立を目指す。
土砂災害の早期検知と適切な住民避難を促す、防災システムを構築
気候変動の影響により、全国で豪雨による被害が増加している。葉山町内では2021年7月豪雨の際に、急傾斜地の崩壊に関する土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)内で土砂災害が発生し、一部家屋が損傷した。町内では、同様なレッドゾーン区域が132カ所もあり、葉山町の全人口のおよそ6%の住民が同区域に居住している。
そのため現在、葉山町では、気象庁の土砂災害警戒情報などに基づく避難情報を全町民に向けて発信しているが、今後、気候変動がより進行し、さらに災害が激甚化する事態も想定されている。そのため、災害時に住民の逃げ遅れ防ぐためには、住民自身が土砂災害の危険性を適時適切な方法で把握し、早期の避難行動につなげられる新たな防災体制の構築が喫緊の課題となっていた。
今回の実証研究は、0.001度単位で傾斜を2方向で測定する斜面変動検知センサー「クリノポール」を土砂災害の可能性のある斜面に埋設。大雨時の斜面変動、特に土砂災害の予兆について、早期に検出可能かどうかを確かめる。クリノポールは、地すべりや表層崩壊を検知する応用グループの傾斜センサーで、バッテリーで5年間稼働し、0.001度の微細な傾斜を計測する。
また、葉山町内での過去の土砂災害の実績雨量や災害状況、地質特性などを踏まえた斜面の崩壊切迫度を設定し、センサーで取得したデータを組み合わせ、クラウド上の「土砂ハザードモニタリングシステム」を介して、利用者のスマートフォンに通知する。または、ネットワーク対応の警報機で避難を促すなど、住民の適切な避難行動につなげるための土砂災害危険性情報の最適な通知方法なども検討する。
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