鹿島建設が162mのビルを新工法で解体、粉じんの飛散と騒音への対策を実現:施工(1/2 ページ)
鹿島建設は、高層ビルの解体工法「鹿島スラッシュカット工法」を開発し、東京都港区で施工を進めている高さ162メートルの「世界貿易センタービルディング既存本館」の解体工事に適用している。鹿島スラッシュカット工法は、工期の短縮だけでなく、高層ビルの解体工事に欠かせない強風と地震の対策や災害リスクの排除に貢献するとともに、騒音の低減や施工中のCO2排出量削減などにも役立つ。なお、世界貿易センタービルディング既存本館には鹿島建設の東京建築支店が入居していた。
鹿島建設は、高層ビルの解体工法「鹿島スラッシュカット工法」を開発し、東京都港区で施工を進めている「世界貿易センタービルディング既存本館」の解体工事に適用していることを2022年7月13日に発表した。
支保工を存置することが不要
世界貿易センタービルディングは、JR「浜松町」駅と東京モノレール「浜松町」駅に直結し、都営地下鉄「大門」駅に近接する交通の結節点にあり、歩行者や車の交通量が多いエリアに位置している。
今回の解体工事では、新幹線が往来する線路など、重要なインフラ施設にも近いため、解体ガラの外部への落下や風散と飛散の防止、近隣への粉じんの飛散、騒音に関する対策を通常以上に徹底しなければならない。
一方、高層ビルの主要な解体工法としては、重機を建物の最上階に乗せて解体する「階上解体工法」と建物をブロック状に解体して吊り取っていく「ブロック解体工法」がある。しかし、階上解体工法は、解体ガラの落下リスクや最上部での粉じんの飛散、地上への荷下ろしが煩雑となるといった課題が存在する。
ブロック解体工法は、解体ガラの落下や粉じんの風散と飛散リスクを減らせるが、切断されたスラブを吊り下ろすまで支えておく仮設支保工の存置量が多くなるため、コストの増加や工事期間が長くなるといった問題があった。
解決策として、鹿島建設は仮設支保工の存置を必要としないブロック解体工法の鹿島スラッシュカット工法を開発した。
鹿島スラッシュカット工法は、独自開発した「斜め切断カッター」や大型ブロックを効率良く揚重する「スラブ切断兼吊上げ治具」、大割ブロックを水平な状態で持ち上げる「4点自動吊上げ装置」、スラブを切断する際に発生するノロ水をろ過・脱水する「スラブ切断ノロ水脱水装置」などで構成される。
鹿島スラッシュカット工法の施工手順は、密閉された建物内部で斜め切断カッターでスラブを先行解体し、躯体を切断して大割りブロック化。次に、大割ブロックを建物内部の大型揚重開口から吊り下ろし、地上階で小割り解体した後、せり下げ足場を逆クライミングし、次の下層フロアを解体する。
斜め切断カッターは、斜めにスラブを切れ、切断したスラブの荷重を隣接するスラブで支えることを実現し、階下にスラブの落下を防ぐ支保工を存置する必要がないため、先行して下層階の床解体に着手することが可能となり、工期短縮を達成。
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