「総合工事業は100社に1社が倒産可能性アリ」2022年下期以降の業種別“倒産”予測:産業動向
アラームボックスは、取引先の与信管理におけるタイムリーな情報収集の重要性と活用法を啓発する目的で、独自の2022年下半期以降の業種別倒産発生予測ランキングを発表した。このうち、建設関連は62社に1社が倒産可能性があるとされた「電気業」の2位、「設備工事業」の4位、「総合工事業」の6位がランクインした。
AI与信管理サービスを提供するアラームボックスは2022年7月7日、2021年5月〜2022年5月の期間に収集された1万628社/25万4174件のネット情報などから、1年以内に倒産する危険性がある“要警戒企業”※を抽出し、「倒産危険度の高い上位10業種」の予測を公表した。
※要警戒企業:アラームボックスが収集したネット情報などを分析した結果、1年以内に倒産する危険性があると判断した企業
資材高騰などで「総合工事業」は6位の危険度
調査結果では、原油価格の高騰や円安による影響を受けた「電気業」や「建設・工事業」をはじめ、コロナ禍での外国人旅行客の激減と外出制限/営業制限のマイナス要因が響いた「宿泊」「飲食業」、エネルギー関連の価格高騰と宿泊/飲食業の営業制限に影響を受けた「農業」、コロナで価値観や需要が変化したアパレル関連の製造/卸/小売で、倒産関連情報が集中したという。
最も倒産の危険度が高いとされたのは、31社に1社倒産する危険性ありとされた「農業」で、次いで62社に1社の「電気業」、75社に1社の「繊維・衣服など卸売業」、89社に1社の「設備工事業」、95社に1社の「宿泊業」が上位5業種。その後、100社に1社の「総合工事業(土木工事業、建築工事業、建築リフォーム工事業など)」、111社に1社の「織物・衣服・身の回り品小売業」と「繊維工業」、112社に1社の「飲食店」と「金融商品取引業」「先物取引業」が同数で続く。
建設関連の分析では、第2位の電気業(要警戒企業7社/調査対象87社)は2021年の初頭から原油や液化天然ガスなどの燃料価格が高騰しており、2020〜2021年冬の深刻な電力不足により、特に発電所を持たない新電力と呼ばれる電力小売り会社で、電力の仕入価格が提供価格を上回る“逆ザヤ”が発生。多くの事業者が値上げや新規契約の停止に踏み切っているが、余力がなくなった企業は事業撤退や倒産、廃業を余儀なくされるケースが相次いでいると分析。今後は、昨今のウクライナ危機などに伴う、電力調達コストの高止まり、今夏の断続的な電力需要の逼迫が懸念されるとしている。
第4位の設備工事業(要警戒企業8社/調査対象143社)は、小規模な中小企業の業績悪化に関する情報が多かったほか、太陽光発電所建設会社の税金滞納、産業廃棄物収集運搬の許可取り消しといったネガティブな噂(うわさ)もあった。業界内での不評に関する情報も散見されており、業界内での悪評が対外信用の低下につながり、結果として倒産に至るケースは珍しくないため、風評に関する情報には注意が必要としている。
また、総合工事業(要警戒企業26社/調査対象522社)は、国や地方自治体からの受注が大きい土木工事業については、オリンピック特需や高度経済成長期に作られたインフラの補修や整備により、業界全体では堅調な動きを見せていたが、2021年3月頃から始まっている木材価格の高騰「ウッドショック」、円安による関連資材の高騰を理由とした資金繰りの悪化、支払遅延などの情報も多く見られたと指摘。なかでも、内部留保の少ない下請け企業は、資材の高騰による経営不振に関する情報が発生していた。また、建設業界は、若手入職者の減少などコロナ以前からの人出不足が起きており、黒字が続いているにもかかわらず、資材高騰と人手不足により倒産に至ったケースもみられたと報告する。
アラームボックスは、今回の調査意図について、これまでAI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」の提供を通じて、膨大な企業情報を収集し、解析しながら企業の連鎖倒産を防ぐ取り組みを行ってきたが、景気悪化の予兆から、アラームボックス上で“1年以内に倒産する危険性がある要警戒企業”として挙げられる企業の数が増加傾向となっていること理由に挙げる。先行き不透明な状況下で、企業には、代金未回収による資金繰り悪化などの経営リスクを回避するべく、取引先の業種動向や倒産リスクを常に把握することが求められている。そのため、取引先の与信管理におけるタイムリーな情報収集の重要性と活用法を啓発すべく、調査の実施に踏み切った。
全業種の背景には、新型コロナウイルスの影響による消費活動の低迷が続くなか、ウクライナ問題や円安の影響による物価の高騰により、ますます景気回復の先行きが不透明となっていることがある。2021年度の中小企業の経営環境は、緩やかな回復傾向だったことも影響し、現時点では倒産を免れている企業も多いが、今後はゼロゼロ融資の元本返済が本格化することから、収益力が落ちている企業の倒産可能性は増大しており、足元ではコロナ融資後倒産の件数が増えていると警鐘を鳴らす。
しかしながら、調査で上位にランキングされた業種のなかにも、財務状況が良好な企業は、当然ながら存在するため、あくまで適切な個社ごとの判断をするにも、動向や倒産リスクをタイムリーに把握できる与信管理体制や仕組みを整えることを推奨している。
<調査の概要>
調査時期:2021年5月1〜2022年5月31日
調査対象:アラームボックスでモニタリングしていた企業のうち1万628社
調査データ:アラームボックスで配信されたアラーム情報25万4174件
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