高速3Dスキャナーを用いたインバート掘削形状モニタリングシステムを開発、西松建設：山岳トンネル工事

西松建設は、山岳トンネルのインバート施工で、掘削した曲面を滑らかに整形する床付作業の安全性と品質の向上、効率化を目的に、「インバート掘削形状モニタリングシステム」を開発した。今後は、操作性の向上など、現場検証を通じて出てきた新たな課題に対してシステムの改良を進めていく。

[BUILT]

　西松建設は、山岳トンネルのインバート※1施工で、掘削した曲面を滑らかに整形する床付作業の安全性と品質の向上、効率化を目的に、「インバート掘削形状モニタリングシステム」を開発したことを2022年4月8日に発表した。

※1 インバート：インバートとは地山の地耐力が不足する場合などにトンネルの底盤に設置される逆アーチ状の構造物。

3Dスキャナーはトータルステーションとの連動が不要

　一般的な山岳トンネル工事のインバート掘削は、掘削面の仕上がりを確認するために、作業員が、トンネル側壁に高さの基準を設置して、定規を使って計測する。こういった施工方法は、掘削重機と仕上がりをチェックする作業員が錯綜することで、重機との接触災害が発生する恐れがある。

従来のインバート床付け作業と仕上がり確認　出典：西松建設プレスリリース

　さらに、トンネル側壁に高さの基準を設置する作業や調整の度に定規を使って床付けの仕上がりを調べる作業が職員の負担となり、測定回数を減らすために余計に掘ってしまう余掘りとその部分をコンクリートで覆う余巻きが生じている。

　そこで、西松建設では、安全性と品質のアップと効率化を目的に、高速3Dスキャナーを使用したインバート掘削形状モニタリングシステムを開発した。

「インバート掘削形状モニタリングシステム」　出典：西松建設プレスリリース

　インバート掘削形状モニタリングシステムは、高速3Dスキャナーを三脚に取り付けてインバート掘削区間に設置し、インバートの掘削形状を計測する。加えて、掘削形状の点群データと設計断面を比較し、重機キャビン内のモニターに、ヒートマップで色分けして表示するため、重機のオペレーターが直感的に床付けの過不足を確かめられ、従来のように重機の近くで作業員が腰線と定規を使って床付け高さをチェックする必要がなくなる。

「インバート掘削形状モニタリングシステム」による掘削箇所のヒートマップ表示　出典：西松建設プレスリリース

　使用する3Dスキャナーは、任意に配置した後方の特殊基準球を自動で探索することで自己位置を推定するため、トータルステーションとの連動が不要となり計測時間を短縮する他、運転席モニター画面から計測開始の指令を出して、全体的な結果が表示されるまで約50秒で、掘削サイクルに影響を与えることなく、効率的な床付け作業が行える。

「インバート掘削形状モニタリングシステム」による現場の計測状況（レーザ光はイメージ）　出典：西松建設プレスリリース

　モニター画面上のヒートマップ表示は、任意の場所をタッチすることで、3Dスキャナーに併設した指示レーザが照射され実際の掘削箇所との対比が容易になる。特徴的な機能としては、モニター画面で、掘削作業中に任意の範囲でグリッド分割し、タッチすることで1秒足らずで指定したグリッド内の再計測に対応するため、確認しながら床付け作業を進められる。

　既に、西松建設では、インバート掘削形状モニタリングシステムの現場検証を実施している。その結果、インバート掘削形状モニタリングシステムにより高速3Dスキャナーを重機から離れた位置で三脚に装着して、掘削形状を計測するため安全性が上がった。

　具体的には、3Dスキャナーの計測により±20〜30ミリの精度で定量的に可視化することで、作業員の技量に依らない余掘りと余巻きの低減を実現しただけでなく、3D表示とインバートを左右に展開した2D表示を同時にモニター上に表示し、あたり箇所を分かりやすくした。

　3D表示はモニター上でドラッグすることで任意の方向から見られ、モニター上の任意の場所をタッチすることで、実際の掘削箇所にレーザーポインターを照射できることも分かった。

　高速3Dスキャナーでは、三脚で配置する際に3Dスキャナーの水平を確保する必要がなく、設置から結果の表示まで1分程度と迅速で、効率的なインバート床付け作業が可能となった。また、インバートの掘削段階から点群データを取得し、蓄積することで実際の掘削土量、インバートコンクリート打設量、インバート巻厚など、各種データの取得と分析が行えた。