指定検査機関が解説“Web建築確認申請”はなぜ必要?「目からウロコ!これからのクラウド活用術」〈中編〉:A-Styleフォーラム Vol.8(1/3 ページ)
住宅用3DCADメーカー福井コンピュータアーキテクトは2021年10月1日、Webセミナーイベント「A-Styleフォーラム Vol.8」を開催した。建築分野におけるクラウド活用をメインテーマに、日本マイクロソフトによる基調講演をはじめ、指定確認検査機関の建築確認申請電子化の解説、実力派設計コンサルによる設計効率化テクニックの紹介など、多彩かつ充実した3時間となった。第2回目のレポとなる中編では、民間の指定確認検査機関のJ建築検査センター 佐々木彰氏によるテクニカルセミナーを振り返る。
近年、わが国では行政手続きのデジタル化が進み、押印や対面を求めていた手続きについても押印原則が見直されるなどして、電子申請の普及が進んでいる。この流れは建築分野でも同様で、とくに建築確認申請の電子化には注目が集まっている。しかし、実際に建築確認のどの部分が電子化され、どのようなメリットが生まれるのか、具体的な中身が見え難いこともあって、現実の電子申請は普及がなかなか進んでいない。
今回のテクニカルセミナーでは、指定検査機関で実際に建築確認の運用にあたっているJ建築検査センターの佐々木彰氏が登壇し、この問題について分りやすく解説してくれた。
建築確認の電子申請について現状は?
「建築確認の電子申請によって、いろいろなことが楽になるのだろうと考えている方が多いようですが」と、佐々木氏は落ちついた口調で語り始めた。実は「申請の流れそのものは、電子化以後も今までとは変わりがない」と同氏は言葉を続ける。
代理者の設計事務所が設計行為を行い、確認申請を提出して、着工するという流れは、電子申請でも全く同じなのである。電子化されたのはあくまで「申請行為」。すなわち確認申請や中間検査申請、完了検査申請といった申請そのものに限られ、図面の審査や現場の検査といった作業部分は電子化されない。
では、建築確認申請における一連の流れの中で、電子化された部分(電子申請の範囲)は何処から何処までなのか。
従来の確認申請の場合は、建築計画を作成したら設計図書を紙に印刷して制定検査機関や行政官庁へ提出するが、この一連の作業──すなわち紙に出力して縮尺などを確認し、必要に応じて押印し、製本して設計図書を仕上げ、これを郵送したり持参したりして届ける作業が、全て電子化される。
つまり、設計図書類を紙に出力する代わりにPDF化し、郵送または持参する代わりにPDFをシステムにアップロードするわけだ。その結果としてのメリットについては、申請者側の「作業工数が減る」と考えると良いだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.