建設業界がデジタル技術で新型コロナを克服するための道筋、IDC Japanの独自レポート調査から:vsCOVID-19(3/5 ページ)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、建設業界でも事業環境が悪化し、いまだに脱出の糸口を見つけ出そうと模索する企業は少なくない。その一方、コロナ禍の副産物として、これまでなかなか浸透しなかったBIMや現場管理ツールなどといった業務効率化をもたらすDXが急速に普及しつつある。こうした国内の建築/建設業を取り巻く環境が様変わりするなかで、オートデスクと市場調査会社のIDC Japanは、コロナ禍で苦境に立たされた建設業が業績回復までに至る道筋を示したウェビナーを開催。IDC Japanの独自調査から浮かび上がってきたCOVID-19を克服するためのキーワードとオートデスクが提供するクラウドソリューションの有効性を説き、いかにしてネクストノーマルに備えるべきかを提言した。
ハイブリッドワークフォースの定着を目標とする「適応」フェーズ
「適応」のフェーズになると、こうしたテクノロジーの適応を効果的に行っているか、テクノロジーを導入する際の効果的な業務プロセスを有しているか、それから、リモートワークもオンサイト勤務もできるハイブリッドワークフォースができる従業員を対象としたポリシー導入を効果的に行っているかという質問に対して、「極めて効果的である」「非常に効果的である」と答えた企業が、いずれも6割となった。
ハイブリッドワークフォース導入のメリットでは、「従業員の健康と安全性が改善」が半数を占めた他、建築/土木の業界が「3K」といわれ、募集しても人材が集まらない、定着率が低迷するという課題に対して、「従業員の定着率が向上」や「勤務場所が限定されないことで人材の誘致能力が向上」なども4割を超えた。しかし、コロナ禍をきっかけに、ハイブリッドワークフォースに対応したソリューションやポリシーを導入したことでこうした人材に関する課題解決の糸口が見つかったことで、afterコロナでも引き続きデジタル投資を続ける必要がある証左といえるだろう。
適応フェーズのアジア太平洋地域の建設業界での具体的なテクノロジー投資トップ3は、「従業員の健康や生活の健全性に関する情報の伝達およびフィードバックの収集に用いるスマートフォンアプリ」「タッチレスの備品(ドアセンサー、自動シンクおよび液体せっけんディスペンサー、音声操作式エレベーターバンクなど)」「体温センサーなどの健康監視テクノロジー」など、現場業務の増加予測に対応して、従業員の安全とセキュリティを確保するためのテクノロジー投資が並んだ。
日本でも同様の傾向となっているが、「スマートフォンアプリ、ウェラブル、またはスマートフォン以外のデバイスを使用した接触者追跡」など、厚生労働省が提供する接触確認アプリ「COCOA」などの企業内展開といったものが含まれているのが特長といえる。
デジタル化を推進してレジリエンシーを強化する「加速」フェーズ
「加速」フェーズの建設業界の大半は、新型コロナウイルス感染拡大の危機に対峙したことで、デジタル化の推進とレジリエンシーの強化を目的とした新しいテクノロジーの採用に力をいれるようになった。
「コロナウイルス感染拡大の結果として、デジタル建設ソリューション(BIM)ワークフロー、入札管理、プロジェクト管理、インサイトなど)を利用するプロジェクトは、どの程度の増加率を示していますか?」という質問には、なにかしらのソリューションを展開し、増加している企業が9割に上った。国・地域別では、日本は「21から30%」という回答がピークであるが、オセアニアでは「41から50%」がピークとなり、日本よりもデジタル建設ソリューションの利活用が進んでいる。
建設業界の各段階におけるテクノロジー投資についてみてみると、「計画と概要説明」や「設計」、「生産設計/施工検討」といったプリコンストラクション、「入札」などで、「現状」とその後の「計画」では両方が半分程度という結果になっているが、「現場作業」では現状が上回って既に普及している一方で、「設計」は現状が低く、これから投資を計画している企業が多いことが分かる。また、アジア太平洋地域全体では、「計画と概要説明」や「入札」「現場作業」が現状で進んでいることが判明した。
建設工程の各段階、「設計」「計画」「建造」「引き渡し」で、デジタルソリューションの知識がどの程度あるのかというのを、ランク1=知識が不足している状態から、ランク5=知識が非常に豊富である状態までで段階的に質問した結果、アジア太平洋地域全体では、「設計」「計画」といったプリコンストラクションのフェーズに比べ、「建造」や「引き渡し」といった建設後のフェーズの方が、やや知識が全体的にあるという結果になった。日本のテクノロジー投資が遅い「設計」では、他の国や地域に比較して、やや知識が不足しているような回答となった。
また、建設図面用のテクノロジーの導入状況では、アジア太平洋地域全体は、「紙の図面をプロジェクトに使用している」が46%となったが、「建設図面をソフトウェアソリューションで作成している」は7%しかなかった。国や地域で比較すると、日本は紙の図面を使用している比率が22%と他の国や地域よりも低く、図面用のテクノロジーに関しては、日本の方が先んじているようにみえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.