一般車両で運べる小型マルチビーム測量無人ボート、手動操作と自動航行に対応:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2021
英国のキングスブリッジに本社を構えるPicotechは、一般車両で運べ、オフセット計測やパッチテストの回数を最小化し、現場で迅速に使える小型マルチビーム測量無人ボート「PicoCAT-130」を開発した。
国内のダムでは、貯水量を正確に把握するために、水底の堆砂容量を1年に1回測量することが求められている。通常は、ダムの湖内で、マルチビーム測深機や慣性GNSSジャイロ、表面音速度計などを搭載した漁船を航行させ、マルチビーム測深機で堆砂容量を測定する。
しかし、漁船が大きいため、測量機器の取り付けや運搬に手間と時間がかかる他、利用するたびに各機器の位置や角度で生じる誤差を補正するオフセット計測やパッチテストもしなければならない。
上記の問題を解消するソリューションとして、東陽テクニカは、英国のキングスブリッジに本社を構えるPicotech製小型マルチビーム測量無人ボート「PicoCAT-130」を販売している。
東陽テクニカは、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げた建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2021」(会期:2021年7月14〜16日、インテックス大阪)内の「インフラ検査・維持管理展」でPicoCAT-130を披露した。
各計測機器のデータ取得状況や状態を陸上のPCで確認可能
PicoCAT-130は、極浅水域の測量に特化した小型軽量無人ボートで、Picotech製マルチビーム測深機「PicoMB-130」やApplanix製慣性GNSSジャイロ「POS MV SurfMaster」、表面音速度計「Ultra SV」、計器が取得したデータを集約するPCを備えており、オフセット計測とパッチテストは購入後に1度行えばそれ以降は実施しなくて済むため、現地でスムーズに水底の堆砂容量を測れる。
操作は、リモコンを用いた手動操縦とあらかじめ航行ルートを設定することによる自動航行に応じている。また、Wi-Fiを使用して、ユーザーのPCとPicoCAT-130に内蔵されたPCを通信することで、各計測機器のデータ取得状況や状態を陸上で確かめられる。
東陽テクニカの担当者は、「PicoCAT-130は、全ての機器を取り付けた状態でも一人で持ち運べ、ワンボックスカーの後部座席などに乗せられるため、これまでのように船専用のトレーラーで目的地まで運搬する必要がない」と利点を話す。
本体や搭載機器の仕様
PicoCAT-130の巡航速度は2ノット(kts)で、最大速度は3.8kts。全長は118センチで、全幅は80センチ。
PicoMB-130のビーム数は256個で、直下ビーム幅は1.4×1.4度、スワス幅は130度。最小レンジ分解能は30ミリで、最大測深レンジは170ミリ。実用測深範囲は環境に依存するが80メートル。
POS MV SurfMasteのロール/ピッチ精度は、静止衛星補強型衛星航法システム(SBAS)補正時が0.04度で、POSPac※1適用時が0.025度。ヒーブ精度は、リアルタイムが5センチもしくはヒーブレンジの5%で、後処理が2センチあるいはヒーブレンジの2%。ヘディング精度は1.5メートルベースライン時に0.085度。測位精度はSBAS補正時が0.5〜2メートルで、POSPac適用時が8ミリ+1パーツ・パー・ミリオン(ppm)×ベースライン長。
※1 POSPac:GNSS技術を用いる3次元マッピングシステムのために、Applanixが開発した測位データ解析・後処理ソフトウェア
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