「深層学習」のブラックボックス、AIはどこを見て橋を分類しているか?【土木×AI第2回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(2)(1/2 ページ)
連載第2回は、機械学習の主要な手法である「深層学習」について発展の歴史とともに、詳しく解説しています。
「深層学習」発展の歴史
機械学習の主要な手法である深層学習(ディープラーニング)についてみてみましょう。深層学習のもととなった考えは、米フランク・ローゼンブラット(Frank Rosenblatt)氏が1958年に発表した「パーセプトロン」であり、その後に発展した「ニューラルネットワーク」でもあります。
パーセプトロンは、生物の神経細胞のアナロジーで外部からの信号によって自らも信号を発する「人工ニューロン(ノードとも言う)」の組み合わせで、脳の働きをコンピュータ上で再現して問題を解こうというものです。第2次AIブームのころにも発展を続け、具体的な問題に適用されて成果を上げています。土木工学では、コンクリートの実験結果の分析にニューラルネットワークが用いられた例などがあります※1。
深層学習は、ニューラルネットワークをさらに深く複雑にしていくことで、より高度なAIを実現するという発想です。図のように多層にノードを重ねていくわけです。
その一手法で画像認識に広く用いられている「畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)」は、1979年に計算機科学者の福島邦彦氏によって提唱されたネオコグニトロンにその原型が見られます。しかし、このような多くのノードを持つネットワークの計算ができるようになるには、コンピュータの進歩も欠かせませんでした。深層学習が画像認識で飛躍的な進歩を見せたのは2012年です。以来、画像認識の応用も大きく広がっています。また、深層学習に用いるような、より高い性能を実現する新たなニューラルネットワークのモデルも、日々生み出されています。
深層学習の例として土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会では、16層のニューラルネットワークからなるVGG16というモデルを用い、橋の分類を試みました。写真のような桁橋と、桁橋以外の2つに分類する学習です。学習の効率を高めるために、別の問題で学習させた優れたモデルに追加で橋の学習をさせる「転移学習」という方法も使っています。
転移学習は、過去の別の問題での経験を新しい問題に生かす、いわば“温故知新”のような方法です。データ数が限られている場合などにはとくに有効な手法となります。その結果、95%以上の精度で橋の分類ができるようになりました。人間が橋梁(きょうりょう)工学を学ぶときとは異なり、力学的な特徴や意味などの情報は一切使わず、画像のみで学習していることになります。
それでは、AIは一体どこを見て橋を分類しているのでしょうか。AIは結果は出せるのですが、なぜその結果になるのかの説明ができないので、「ブラックボックス」であるとも言われています。
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