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「足羽川ダム」設計のCIM適用で業務効率化の実例、200枚超の図面作成を自動化Autodesk University 2020(2/4 ページ)

小規模を除く全公共工事でのBIM/CIM原則適用へ向け、ここ数年、運用対象が拡大している。しかし、土木の設計業務へのCIMの普及・定着は遅れ気味で、その促進には実現場でのBIM/CIM導入効果の実証が必要だ。日本工営では、足羽川ダム建設プロジェクトで設計業務の分析を行い、CIMで効率化可能な部分を抽出。実際にCIMを用いて効率化を進めている。オートデスク主催のオンラインイベント「Autodesk University 2020」で、同社の山田憲治氏が行った発表から、取り組みの内容を紹介する。

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ダム設計の業務分析と効率化検討

 「私たちはまずダム設計の業務分析を行い、業務のどこにCIMを活用すれば効率化できるのか──ポイントを整理しました」。山田氏がまず着目したのはダム設計で作成される図面の膨大さだ。例えば、地形測量図から起こす基礎掘削の断面図だけで100枚超、コンクリートのリフトには約200枚以上。さらに型枠や法面処理工用や通廊の配置検討用、放流管やゲートなども堤体設計に反映させ、別途業務の放流管・ゲートの詳細設計との調整。さらに複雑な3次元形状を持つ、これら施設図面間の整合性確保、形状・寸法の頻繁な変更対応に関連図面の修正も不可欠となる。この膨大な図面作成とその結果の数量算定作業をCIMの活用で自動化しよう、というのが山田氏らの最初の着眼点だった。

 「私たちがCIM活用対象として選んだのは、福井県にある足羽川ダムの建設プロジェクト。ダム高約100メートルという日本最大規模の流水型ダムです」。流水型ダムとは洪水調整用の施設で通常時は水を溜(た)める必要がなく、川の状態で水が流れている。しかし、洪水になって水位が上がると、一時的に洪水を貯留することで下流域の洪水被害を軽減する。そのため、放流設備が川面と同じレベルの低標高部に集中することになり、施工スペースが非常に限られる。そのため、極めて狭い範囲に施設を設置しなければならないのだ。では、このような現場でCIMによる自動化を進める場合、どのような課題が発生するだろうか。山田氏らは、CIMによる自動化へ向けて検討を進めていった。


日本最大規模の流水型ダム「足羽川ダム」の概要

 「1メートルリフト(打設高)でコンクリートを打設する場合、打設面上下で形が変わるため1メートルあたり2枚の図面が必要です。前述の通りダム高が約100メートルなので平面図だけで約200枚となります」。

 加えて──と山田氏は言葉を続ける。左右岸方向には15メートル間隔で25ブロックとなり、これに対し5メートルごとに断面図が必要となるから、計75枚を作ることになる。総計すると図面は総計300枚余に達する。また、打設場所によりコンクリートの配合も変わる。そのため配合区分は10種類以上に分割する必要があり、この10種類についても300枚の図面内で整合しなければならない。さらにダム軸がカーブしているので、監査路なども3次元的に複雑な形状となり、2D図面の作成にあたって多くのミス発生が予想された。


3Dモデルからスライス図を作成していく

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