BIM導入のメリットを検証する「大和ハウス工業チームの連携事業」Vol.3:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(15)(3/5 ページ)
2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は前回に続き、我々の連携事業の、施工段階移行の具体的な取り組みについて、説明を加える。
共通データ環境(CDE)を活用した鉄骨原寸検査
設計と工場のBIMデータ連携は、原寸検査が肝である。原寸検査がスムーズに行われることで、鉄骨の情報加工時の変更・修正が軽減するからである。実は鉄骨工事の情報加工で重要なのは、製作図を作成する時間を減らすことではなく、原寸検査時の未決事項を無くすことだと言っても過言ではない。今回は、BIM 360に原寸検査時で使用する資料や質疑事項を用意して、事前に確認し、質疑応答に回答をしておくことで、実際のTV会議による原寸検査が、これまでより効率化できると考えた。
この共通データ環境による原寸検査は、今回初めての試みであったので、BIMモデルでの納まり確認までには対応できなかったが、これまでの原寸検査より、25%短い時間で完了した。今後、これらのルールの整備や参加者の習熟度が向上することで、さらなる効率化が見込めるだろう。
施工における取り組みについて
ここからは、約1.5カ月で実施したバーチャル施工について紹介する。下図の工程表のように2020年11月9日に着工し、2020年12月21日に引渡しとする工事工程表を設定した。
通常であれば1年以上かかる工期を1.5カ月に凝縮するので、1日が10日分の作業に相当し、フジタはとても忙しかっただろうことが容易に想像される。しかし、BIM 360の機能を利用して、日報や検査記録なども、入れていただいたので、かなりリアル感のあるバーチャル施工となった(※本機能は、気温や風速の単位が日本と一致していないが、今回は検証として取り組んだ)。
実物件での工事でも、1.5カ月費やしてでも、事前にバーチャル施工を行うことで、工期の短縮ができるのではないかという意見も挙がった。確かに、バーチャル施工で、仮想引き渡しを行い、その通りに施工するという“デジタルツイン”を具現化した施工ができれば、下図のように結果として工期短縮となる可能性があるという考え方は大変面白いと感じた。少なくとも、品質や安全の面では、効果がありそうである。この考え方は、今後、検討する余地があるだろう。
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