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FMはどこから来たのか、そしてFMを学ぶには――(下)いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(3)(2/2 ページ)

本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。第3回は、前回に続き、いかにしてFMを学ぶかをテーマに詳しく解説する。

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◆FMは「第4の経営基盤」

 FMは、一般に経営資源といわれる「人・金・情報・もの(ファシリティ)」の一つであるファシリティを効果的にマネジメントすることにより、経営基盤になるとして、FMを「第4の経営基盤」とも呼んでいる。

 日本の多くの企業は、このFMという第4の経営基盤を有効に生かしてはいない。テーブルでいえば、一本の足が折れているようなもので、4本の足でしっかり立つテーブルにすること、つまり4つともしっかりとマネジメントすべきであるという願いを込めたポンチ絵である。


FMは「第4の経営基盤」

 さらに、公式ガイド ファシリティマネジメントの目次構成を見ると、建築関係者は、「第7章 プロジェクト管理」の一部、「第13章 不動産取引関連の知識」「第14章 施設関連の知識」などは、容易に理解できるだろうが、第1章から第3章までの経営的視点や財務の視点、第4章から第10章までのFMの業務サイクルを通した発注者の業務については、あまり理解されていない。もちろん、新築などのプロジェクト中心の知識は豊富であるが、その前後に発注者が、いかにPDCAサイクルを回しているかを理解していただきたい。

 とくに、設計前、組織としてどのような戦略・計画があるのか、発注者や利用者にとっては竣工後が本番で、「運営維持→評価→改善」という長いライフサイクルがあるということを、あらためて認識していただきたい。

 建築は人が使うものなので、「第11章 人間性関連の知識」や「第12章 ワークプレース関連の知識」も重要である。オフィスなどの内部空間は、ワークプレースとしていかに構築し、運営維持するかが重要である。

 建築関係者の多くは、建物の外観や空間、設備の構築には興味を持つが、ワークプレースに関しては、インテリアデザイナーや家具メーカーの仕事だという固定観念がある。ワークプレースがいかに経営へ寄与し、大切なものであるかの意識が低く、そして竣工後の運営維持面にも関心が薄い。ファシリティマネジャーは、ワークプレースの構築や運営維持に大きく関与するので、プロジェクトを進めている時、建築関係者と齟齬(そご)が生じることもある。

 例えば、現在のようなコロナ禍の中で、ファシリティマネジャーは瞬時にさまざまな対応を求められる。在宅勤務が常態化し、オフィスは密にならないようにフリーアドレスの対応や飛沫感染防止の対策も必要になる。 さらに、建築的に、感染症対応のセキュリティ動線、ゾーンごとの間仕切りの移動や設置、空調や換気の問題、タッチレス化など多様な対応が求められるが、これらは瞬時には対応できないし、このようなことは考えてこなかった。


フリーアドレスで仕切りパネルを高めに変更設置した例

 しかし近年、一部の優秀な建築家は、企画段階のブリーフィング(プログラミング)で、利用者やファシリティマネジャー、経営者の声をよく聞き、ワークプレースや運営維持まで、十分考慮した設計をしている例も見られようになってきている。

 FMは、「ファシリティを通じた経営活動」であることが分かれば、建築行為は、その一部であり、手段であることも自ずと理解できるようになるはずだ。建築関係者は、つくる側とつかう側の立場の違いを認識し、建物はつくる大切さだけではなく、ライフサイクルを通して考える大切さも知っていただきたい。

著者Profile

成田 一郎/Ichirou Narita

2011年7月、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(現:公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会:JFMA)常務理事兼事務局長に就任。2016年6月には日本ファシリティマネジメント協会 専務理事に就任し、現在に至る。

一級建築士。認定ファシリティマネジャー。

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