前田建設のコロナ対策案を評するコンペ、ファイナリストは病床見守りIoTなどを提案:第1回 ICI INNOVATION AWARDS Live Vol.3(2/3 ページ)
前田建設工業 ICI総合センターが主催した社会的な課題の解決を図れるアイデアを評価するコンペティション「第1回 ICI INNOVATION AWARDS Live」で、アルコ・イーエックスやネーブルジャパン、アイデアクラウド、OLTAといったファイナリストが提案したアイデアを紹介する。
液体で建物への塗布が容易
ネーブルジャパンは、「VSコロナから普遍的建築物への展開」を主題に、大きさが5ナノメートルを下回るアナターゼ型酸化チタンの光触媒「超越光触媒」を用いたウイルス対策を提案した。
超越光触媒は、超越化研 代表取締役社長 石宮陽子氏が開発した触媒で、新型コロナウイルスを含む多くのウイルスを構成するタンパク質を光酸化作用で破壊し、無害化する。形状が液体のため、建物の新設や既設、材質を問わず、塗布が容易で、部材の殺菌や抗菌に役立つ。細密な構造により塗工膜全体で機能する上、可視光でも、光酸化作用を発揮するため、地下空間や閉鎖空間でも使え、シロキサン結合膜で溶脱が少なく、強固な塗膜を作り上げる。
今後は、超越光触媒のメカニズムを東京大学 物性研究所 教授の広井善二氏や柴山充弘氏と解明する。ICI総合センターとは、超越光触媒を用いて、内装材やインテリアの殺菌と抗菌の他、空調機器と組み合わせて、ウイルスの空気感染を防げるか実証試験することを構想している。
担当者は、「前田建設工業 ICI総合センターとは、超越光触媒の研究を協業し、成果をまとめ、事業計画の作成をサポートしてもらい、共同販売していきたい。複数の事業パートナーと、ジョイントベンチャーを形成し、販売会社を設立したいとも考えている」と方向性を提示した。この他、超越光触媒を利用した医療資材を医療コーディネーターの田島和雄氏と共創することも発表した。
ARで展示会やライブを体験
アイデアクラウドは、「新たなレイヤーを生み出す 芸術・文化 ARプラットフォーム」をテーマに、ARプラットフォーム「AR SYNC」を使用した施設価値の向上方法を披露した。
AR SYNCは、一般的なCGをiOSやAndroidに適したAR規格に書き出せるシステムを搭載し、課金やGPS、埋め込みといった既存のWeb機能とも連携しやすい仕組みだ。簡単なCGはWeb上で生成するため、B2B間で、ARのスケールが確認しやすい。
担当者は、「現在、新型コロナウイルスの影響で、移動や人の密集に制約が生じ、芸術や文化の提供をビジネスにする人が、講演と展示する場の激減による収益の減少に悩んでいる。本や映像を介した代替手段があるが、従来の体験よりも質が低いものとなっている。AR SYNCを活用して、現実空間に、ARで芸術作品やアーティストのライブを投影し、ユーザーが楽しめるサービスを構築することで、新たな収益源とすることができるはずだ」。
続けて、「新型コロナウイルスの終息後には、既存展示物の拡張などに使える。例えば、恐竜の骨を展示している場合は、ARで肉体を重ねて、動かしたりなど、これまでに無いARアトラクションになる」と述べた。
マネタイズは、使用する場の規模に合わせたプラットフォーム利用料や一般消費者が支払う展覧料とARで誘導するECサイトの物販で得た利益からのマージン、AR上に表示する広告掲載料を想定している。
将来的に、ARがスマートグラスの普及とともに世の中に浸透した際は、プラットフォームの運用データなども売り出していく方針だ。
ICI総合センターとの協業について、担当者は、「前田建設工業が手掛ける芸術・文化施設で実証試験に取り組む上、愛知スカイエキスポや愛知道路コンセッション、仙台空港でARアート展を開き、施設価値の向上に貢献するかを調べたい。また、ICI総合センターの施設内で、ARの活用方法について検証していく」とコメントした。
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