ひび割れや剥落を抑制する無機系短繊維補強コンクリートを実用化:新建材
戸田建設と公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)が共同開発した玄武岩由来の無機系短繊維補強コンクリートが、鉄道構造物の一部に初適用された。従来の鋼繊維補強コンクリートと同等の曲げ靱性を維持しながら、さびの発生や紫外線による劣化などの課題を克服した点に特長がある。
戸田建設は2020年3月16日、繊維長40mmの玄武岩由来の無機系短繊維補強コンクリートを鉄道総研と共同開発し、鉄道構造物へ初適用したと発表した。無機系短繊維補強コンクリートは、鋼繊維補強コンクリートと同等の曲げ靱性(材料の粘り強さ)と錆びや劣化の少なさを共存させた点などに特長があり、鉄道構造物への採用は今回が初となる。
無機系短繊維補強コンクリートは、補強材として繊維長40mmの玄武岩由来の無機系短繊維を1.0vol%混入したことで、鋼繊維補強コンクリートと同等の曲げ靱性(材料の粘り強さ)を実現した。これにより、振動の影響の大きい鉄道構造物に多発するひび割れや剥落の発生を抑制する。
無機系短繊維には腐食が発生しないため、コンクリート表面の美観を損なうことがない。施工性は通常のコンクリートと同等であり、価格は従来の鋼繊維と比較して約3分の2に抑制できた(繊維混入率1.0vol%の場合)。
短繊維補強コンクリートは、ひび割れ・剥落防止などを目的に適用が進んでいるが、従来品には錆による美観の悪化や紫外線による劣化などの欠点があった。この課題を解決するために戸田建設と鉄道総研は、優れた耐さび性能と粘り強さを持つ無機系短繊維に着目。特殊なエポキシ樹脂で繊維を被覆し、耐アルカリ性を大幅に向上させることで、実用化に至った。
今回適用したコンクリート構造物は、施工後14カ月経過した現在も仕上がり面にひび割れの発生はなく、良好な美観を保持している。今後も経過観察を継続して長期耐久性を確認するとともに、トンネルの覆工コンクリートや高架橋のスラブなど短繊維補強コンクリートが用いられるコンクリート構造物を対象として適用を進めていく。
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