軽量でサイズ変更が容易なCFRP梁を活用した新防振浮床工法を開発:新工法
大成建設とジャムコは、鉄骨梁を用いた防振浮床工法の適用が難しい施設向けに、軽量でサイズ変更に応じる新工法を開発した。
大成建設は2020年2月5日、ジャムコと共同で、床材の下地に軽量で長尺にも応じた炭素繊維補強樹脂(CFRP)製梁(はり)を用いた防振浮床工法「T-Silent CFRP Floor」を開発し、優れた遮音性能を発揮することを確認したと発表した。
6メートルで重さは17キロ
スタジオやホールといった静けさが求められる施設やスポーツジム、設備機械室など音や振動を発生させる施設では、高い遮音性能が求められる。そのため、通常は、建物内部の振動を抑制することで、空気や建物を伝搬し生じる音の発生を低減させている。建物の構造床上に防振ゴムを敷き、重量がある床板を支える防振浮床が使用されることが少なくない。
床板として木製の板材を用いる乾式防振浮床工法では、従来、下地に長尺の鉄骨梁を使い、防振ゴムの設置間隔を拡げることで遮音性能を向上させていた。だが、鉄骨梁は重さがあるため、人力での運搬や設置が困難であり、室内における施工性にも問題があった。多くの場合、鉄骨梁の長さを約3メートルに制限し対処するので、防振ゴムの設置点が増え、十分な遮音性能を確保できないという課題があった。
鉄骨梁の不安材料を拭う目的で、大成建設とジャムコは、T-Silent CFRP Floorを開発した。T-Silent CFRP Floorで使用するCFRP梁は、長さ6メートルで、重さは同じサイズの鉄骨梁と比較して17分の1の約17キロ。軽量なCFRP梁を利用するため、人力での運搬や施工時の取り扱いが容易となり、鉄骨梁による従前の工法に比べ、3分の1程度の労力と工期で施工が進められる。
長尺のCFRP梁を使用することで、防振ゴムの支持点間隔を拡げられるため、優れた遮音効果を発揮する。最も遮断しにくいとされる63Hz帯域での評価で15dB(デシベル)以上低減することが明らかになっている。
組み込まれたCFRP梁は、連続成形方式で、断面を成形する金型に炭素繊維シートを連続的に通過させながら、熱と圧力を加えて硬化させている。結果として、長さの制限がなく、設置する建物の寸法に合わせて下地となるCFRP梁を容易に成型でき、防振浮床に適用させられる。
大成建設とジャムコは、T-Silent CFRP Floorの特性を生かし、これまで施工が難しかった騒音や振動低減が必要とされる建物の新築・改築工事に有効な工法として、顧客に提案していく。
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