【限定全公開】「作る」から「使う」“CIM”人材の育成はどうすべきか?:Autodesk University Japan 2019(5/5 ページ)
国内外の鉄道・道路・橋梁などの計画や設計、3次元モデル化、インフラマネジメント、まちづくりコーディネートなどを行う中央復建コンサルタンツは、CIMにいち早く取り組み、設計提案に活用してきた。社内では3次元モデルを単に「作る」だけではなく、実践的に「使う」を標ぼうし、CADオペレータや管理者、さらには一般職を対象にした独自の研修を定期開催し、各ポジションでCIMを扱える人材を自社で賄うため育成に努めている。
CIM導入時はトップダウンによる“強制力”が必要
3次元化で最もメリットがあったと森氏が語るのが施工計画。「視覚的に施工計画を立てて提案するので、受注につながりやすい。施工計画フェーズでのモデルの詳細度はそこまで高いものは必要なく、費用対効果という側面でも有効だ。ただ、ソフトウェアの問題で設計後の施工会社や維持管理の会社が異なるCADを使っている際にはどうするかという課題は残る」。
今後の課題としては、「3次元モデルをトンネル工事の騒音対策工に転用した際に生じた。防音壁をこの高さで建てたら、発破騒音が広がらないことを4パターンの3Dモデルで検討・照査したが、3次元解析データとCIMモデルが完全にリンクしていなかったため、一部人の手による入力が必要となり、手間が生じ、人が介在することでミスも起きた。これからのソフトウェア改善に期待したい」。
CIM推進の秘訣を森氏は、ある程度の“トップダウン”、言い換えればある程度の強制力は必要と強調する。「インストラクターやマネジャーの研修は誰かを選んでやってもらう指名制だった。CIM推進室のような専門部署が全てを引き受けるのではなく、キーマンを育て、その人が広めていかないと全社展開はしにくい。便利だと思ったものは勝手に広がっていくので、その原動力となるモチベーションを高めるための成功体験を社内で蓄積し、共有することは大切だ。やる気が無ければ人はなかなか実行に踏み切らない」。
CIM導入は、「きつい、きたない、危険」の3Kから、「給与、休暇、希望」という新3Kをもたらす。森氏は「最近の土木業界は元気がないといわれるが、CIMによって無駄で時間が掛かる業務から脱し、本来の土木技術者としての業務に注力できる環境が実現するのではないか」。
将来は、「3Dモデルを中心に、設計者、施工者、管理者が協議をしながら事業を進めていく、今までの縦割りではない全く異なる業務スタイルへと変革することが想定される。その先には、業界の魅力向上、さらには活性化に資することも見込まれる。人材確保に悩む企業にとっては、離職率の低下という恩恵も与えられるはずだ」と提言し、最後に結んだ。
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