アプリ不要でARを活用可能な技術「webAR」をAGCが導入、設備開発の速度向上目指す:AR
AGCの素材開発は、組成や生産プロセス、設備などの開発フェーズから量産に至るまで、数十年を要することもあるという。その中でも、設備開発は同じ図面や仕様を共有している場合でも、組成開発者と設備開発者が認識する現物イメージに乖離(かいり)があり、開発に多大な時間をかけていた。こういった課題を解消するため、AGCは専用アプリとマーカーがなくても、ARを容易に使えるテクノロジー「webAR」の導入を決定した。
AGCは2019年11月27日、同社で素材の組成開発を担う材料融合研究所と素材の生産プロセス構築や設備開発を行う生産技術部で、KAKUCHOの保有するテクノロジー「webAR」を試験的に使用することを発表。2019年12月からwebARを現場に導入し、設備開発のスピードアップを図っていく。
3DモデルはURLに埋め込み使用
調査会社のDigi-Capitalのデータによれば、「AR/VR産業全体の収益」は、2022年に約10兆円に達する見込みで、AR/VR市場の7割以上をAR産業が占める見通しだという。
また、ARアプリは2018年末までに9000万回インストールされており、2022年には3.5億回に到達することが想定されている。
一方、これまでAR技術は、アプリ開発に伴う高額なコストと複雑な操作性などがネックとなり、多くの企業が活用に踏み切れなかったという。
こういった壁を打破したのがwebAR。webARは専用アプリとマーカーがなくても、Webブラウザ上で、ARを簡単に使えるテクノロジー。写真やCADデータなどから3Dモデルを製作することにも応じているため、任意に選んだ製品のAR化も容易だ。作成した3DモデルはURLに埋め込め、それをスマートフォンやタブレットで読み込むことで、画面上に投影し、特定の空間に重ね合わせられる。
従来図面や仕様を共有するだけでは、正確に伝えられなかった現場のレイアウトや作業性、安全性などをARで伝達することが可能になるため、設備搬入後のイメージの共有などで役立つという。
2019年11月27日に開催した記者発表会では、装置増設をイメージした3Dモデルを用いたwebARのデモンストレーションなどが実施された。
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