世界最高級強度で50%の工期短縮、トンネル支保工の超高強度吹付けコンクリート:山岳トンネル工事
大成建設ら3社は、山岳トンネル工事におけるトンネル支保工を対象にした世界最高級の強度を有する吹付けコンクリート「T-HPSC 100」を開発した。新材料を用いることで、脆弱な地山条件に適用する二重支保工などの対策が不要となり、従来の約半分の工期で施工が完了する。
大成建設、BASFジャパン、デイ・シイは共同で、トンネル支保工に用いる世界最高級の強度で優れた施工性を有する吹付けコンクリート「T-HPSC 100(T-HPSC:Taisei-High Performance Sprayed Concrete)」を開発した。脆弱(ぜいじゃく)な地盤などの地山条件でも、二重支保工が要らなくなり、効率的な施工が実現する。
トンネル支保工の施工を効率化
山岳トンネル工事に用いる吹付けコンクリートは、掘削中のトンネル形状を維持するために施工する支保工の一部として用いられ、掘削したトンネルの変形度合いに応じ、適切な強度のコンクリートを使用している。
しかし、脆弱な地盤や高い圧力が作用する地盤などの条件が厳しい現場では、吹付けコンクリートに加え、支保工を二重に用いるなどの対策を施す必要があった。
そこで大成建設ら3社は、厳しい地山条件でも効率的に施工するため、従来の2倍以上の強度を持ち、施工性にも優れたコンクリート材料としてT-HPSC 100を開発した。
T-HPSC 100の強度は、設計基準強度で72N/mm2(ニュートン/平方ミリメートル)、実強度で100N/mm2。実強度100N/mm2以上の超高強度コンクリートは通常、粘性が非常に高く、そのままでは吹付けコンクリート材料としての使用には向かなかった。新規に開発した専用吹付材によって粘性を大幅に低下させ、流動性を確保したことで、既存の設備・装置で施工することができる。
材料は、ノズルでの吹付時に同時混入する液体急結剤の作用で、高い付着性を有し、従来のコンクリートに比べ、施工時のはね返り量(付着せずに落下する量)が抑えられる。施工時に生じる粉塵(ふんじん)濃度も、従来工法との比較で1/3程度に低減される。
また、施工性向上や材料ロスの低減により、これまでの高強度吹付けコンクリートに対し、材工込みのコストは同等のままながら、最大50%の工期短縮が見込める。
実証試験では、T-HPSC 100と一般的な吹付けコンクリートの性能を比較検証し、優位性を確認したという。
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