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インタビュー

ハウスメーカーが構想する“不動産ブロックチェーン”の可能性とインパクト積水ハウスIT業務部の挑戦!(3/3 ページ)

積水ハウスは、2020年以降を見据えた“住”関連ビジネスの基盤づくりを進めており、その一環としてブロックチェーンを活用した次世代不動産プラットフォームを構想している。プラットフォームには、通信会社、ガス会社、保険会社が参加しており、将来ビジョンでは水道や電力、行政などとの連携も視野に入れ、異業種間での新規サービスの創出を見込む。

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民主的、客観的、広範囲な信用スコアを蓄積・運用

 田原氏は、「ブロックチェーンには、連携がしやすいという利点があり、複数企業からの情報集約に適している。日本では個人に関わる情報の提供や活用に根強い不信感があるが、異なる業界が横断的にリンクして、居住、与信、各種契約購買の信用情報を、“利用者の判断”という前提で提供し、日常のさまざまな場面で多くの企業が利用することができるようになれば、本人認証を経る手続きが即日その場で行えるようになる」と、その有効性を説く。


積水ハウス IT業務部 課長・田原陽一氏

 さらに、「(利用者主体の)民主的で、客観的かつ広範囲な信用スコアを蓄積・運用することで、ホテルのWeb予約のように簡単に部屋が借りられれば、短期利用やシェアリング、遠隔地からの契約など、賃貸のそのものの仕組みにイノベーションが起き、市場の流動性が増して活性化にもつながるはずだ」とも話す。

 田原氏の指摘するようにブロックチェーンのメリットは、複数の企業が利用して必要な情報に随時アクセスできることにある。仮に自社の物件だけを扱うのであれば、社内の完結したシステムだけで済んでしまう。物件情報や入居者情報の共有は、非競争領域といえるもので、企業間でバッティングすることがない。実際に、自社システムを持たない地場の不動産業者に、物件管理サービスとして提供することも検討されているという。

 2019年9月にリリースされた計8社による共創では、商用化を視野に入れて2020年をめどにコンソーシアムの構築が目標に掲げられている。業種を横断した企業がユーザー情報を共有することで、住宅だけにかかわらず生活に関わるサービス全体の利便性向上を見込む。


コンソーシアム形成による企業間情報連携基盤のイメージ

 一例として、今後予定されている構造計画研究所の電子錠「RemoteLOCK」を導入した実証実験では、ブロックチェーン上の本人確認を用いて、ワンタイムキーを部屋の内覧用に渡す。ワンタイムキーの機能は、宅配便の不在受け取りやハウスキーパーへの受け入れなどにも、時間を限定して対応でき、もし仮に懸念されているワンタイムキーで入った侵入者による盗難などが発生した場合は、コンソーシアムに参画している損保会社との連携で、補填(ほてん)も可能になる。

 現在の構想では、「KDDIが保有している携帯電話の契約情報を1次情報として連携し、その先に電力、水道といったライフラインに関係する情報、さらにマイナンバーや登記などの行政サービス、他業種とのブロックチェーンともリンクした次世代共通インフラの確立を目指したい。ここを起点に、共通IDで多様なサービスが受けられる情報共有・活用の流れが加速し、これまでにない全く新たなサービスが創出されることを期待したい」と抱負を語った。


他業種や国との連携も視野に入れた次世代共通インフラとしてのブロックチェーン構想

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