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清水建設がEDGEMATRIXに出資、エッジAIを使った“スマートビル”2020年に実証へAI版のiモード(1/3 ページ)

清水建設やNTTドコモらから出資を受け、カメラ映像を取得したその場で解析する“エッジAI”の事業を本格化させるEDGEMATRIX。現在、清水建設と、ビルのカメラやセンサーで取得したデータをAIで分析し、セキュリティや効率的な運用に役立てるスマートビルの実用化に向けた共同開発を進めている。早ければ、2020年上期には、建物(施設)のIoT・AIプラットフォームの実証実験に着手するという。

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 エッジAI事業の本格展開に乗り出すベンチャー企業のEDGEMATRIX(エッジマトリクス)は2019年8月29日、都内で会見を開き、太田洋社長らが今後の事業戦略を発表した。

カメラ映像を用いる「IVA」に特化した現場(エッジ)AI


EDGEMATRIX 副社長の本橋信也氏

 EDGEMATRIXは、オブジェクトストレージを扱う米クラウディアン(Cloudian)の日本法人AIチームスタッフが、同年7月1日付けでAI事業をスピンオフさせ、完全転籍して立ち上がった。8月6日には、清水建設、NTTドコモ、日本郵政キャピタルの3社から9億円を資金調達し、AIのあらゆる普及・浸透を目的に、エッジAI事業を推し進める。

 EDGEMATRIX 共同創業者兼代表取締役 副社長の本橋信也氏は、「前身のクラウディアンだった3年前に、首都高速沿いのビルボード広告にカメラを設置して、車種や年式などを識別し、例えば高級外車にはゴルフの屋外広告など、ドライバーの好みを予測したコンテンツを大型ビジョンに表示する実証実験を行った。結果、識別する精度を上げるには、4Kなどの高精細映像が欠かせなかったが、AI処理するためにクラウドへ映像を送ると、ネットワークの負荷が大きくなり、コストや処理する時間に影響を与えた。これから運用が始まる5Gも見据え、高精細映像の活用には、データを取得する現場(エッジ)でAI処理を行うことが必要だと思うに至った」とエッジAIの意義を話す。


クラウディアン時代の屋外広告にAIを活用した実証実験

 エッジAIとは、クラウド上で運用されることが多いAIの学習や推論アルゴリズムの実行を、カメラやセンサーなどの近く、データ生成現場(エッジ)で処理することを指す。大容量データや取り扱いに注意を要するセンシティブな情報をクラウドに上げるリスクが無くなり、遅延なくリアルタイムで処理結果が反映される優位性がある。エッジAIであれば、コストや場所の制約に縛られることなく、高精度のAIを素早く手軽に、汎用性も持たせられるため、パートナー企業と用途ごとに開発して派生させていく、AIのアプリケーションのような展開が見込まれる。

 EDGEMATRIXのエッジAIはとくに、3年前の実証実験でも用いた目=カメラで取得した映像を人工知能が分析する「IVA(Intelligent Video Analytics)」に注力している。大型ビルであれば、設置されている数百台のカメラ全てを把握するのは物理的に無理でも、AIによって人の目が行き届かない場所もカバーすることができるようになる。さらにIVAであれば、監視だけにとどまらず、顔認証や行動分析、製造ラインでの不良品判定、火災の初期検知などにも、AIを活躍させる場が広がる。


「IVA(Intelligent Video Analytics)」

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