中部地整管内でICT土工が効果を発揮、作業時間を大幅削減:メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2019(2/2 ページ)
名古屋工業大学 名誉教授の山本幸司氏は、建設ICTに関する国土交通省や中部地方整備局の取り組みを紹介し、建設ICTの有用性を普及している。
従来施工と比較し、作業時間は全国平均を上回る約35%削減
セミナー後半では、中部地整発注の直轄工事でのICT土工の効果について解説された。2016年度末に完成した36工事の受注者に行ったアンケート調査によれば、起工測量からデータ納品までの土工に関連する業務時間は、これまでの施工と比較し、全国平均の約26%を上回る約35%低減。土量別平均削減率は、土量が大きくなるほど増加傾向になることが明らかになった。
2018年度末までに完工した工事の受注者が提出したアンケートによれば、起工測量からデータ納品までの一通りの延べ作業時間は、従来のものと比べ、全国平均と同等の約33%減を実現。施工対象の土量に関わらず効き目が出ているという。
2018年度末までに竣工した土量5000立方メートル未満の現場でとられたアンケートでは、起工測量からデータ納品までに要する時間は、これまでのものと比較し、約38%軽減し、全国平均の削減率である33%より5%高い値となった。
最後に、山本氏は、ICTを土工へさらに普及するための課題について、「新しい監督・検査基準の導入や発注方法の改善、ICT土工に関する建設関連企業の設備投資に対する支援といった国交省施策の拡充が必要となる。ICT土工に対応できる技術者・技能労働者の育成や建設ICTの技術者資格制度を設立することも重要。ICT土工の効果を拡大していくことやその評価を確立することも求められる。土工事の規模、現場環境とICTを取り入れた効果の関連分析も行うべきだろう。建設機械の改良・開発やハード・ソフトの両面に対応するドローンなどのテクノロジーの改善も必須。建設ICTにトラブルが発生した際のバックアップシステムの開発も大事になる」とまとめた。
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