航続距離100キロの“垂直離着陸(eVTOL)”ドローン、デモフライトに先駆け披露:第5回国際ドローン展
みるくるは、「第5回国際ドローン展」で、固定翼とマルチコプターを組み合わせたハイブリッドタイプの電動式垂直離着陸(eVTOL:イーブイトール)機「Wingcopter178」を初のデモフライトに先駆け、実機を展示した。
みるくるは、ドローンを産業利用する専門展示会「第5回国際ドローン展」(会期2019年4月17〜19日、幕張メッセ)で、固定翼とマルチコプターを組み合わせた「Wingcopter(ウイングコプター)178」を展示した。2019年5月14日に長野県伊那市で初のデモフライトを実施すると告知した。
固定翼×マルチコプターでパワフルなフライトを実現
Wingcopter178は、固定翼機の前後に可動式のマルチコプターを配置した構造を持つハイブリッド型の電動式垂直離陸機「eVTOL(イーブイトール)」。飛び方には、マルチコプターモード(ホバリング)と固定翼モード(前進飛行)の2種類があり、空中での自由度が高く、パワフルな飛行が可能となる。2つの飛行モードを組み合わせることで、垂直方向への離着陸と併せて、一般のドローンを超える長時間の飛行や長距離フライトが実現する。
eVTOLのメリットは、固定翼機でありながら、離着陸時の滑走路を必要とせしない点がある。通常のドローンよりも飛行距離や積載効率に優れているため、高解像度カメラを装備させ、広範囲のインフラ点検や写真測量、さらには物資輸送などのこれまでに無い産業分野での活用が見込まれる。
機体は、ドイツのWingcopterが製造し、みるくるは国内のパートナー企業として、技術サポートやメンテナンスなどを行う。
2つの飛行モードは、ティルトローターという特許取得済みの独自機構によりスムーズに移行する。マルチローターによる離陸で一定の耐風性を保持しながら、上空での固定翼による前進飛行時には、最大時速150キロの速度を得られる。
ラインアップには、ペイロードを大容量化して離陸重量16キロを達成した「Wingcopter178 Heavy Lift(以下、HL)」シリーズもある。HL向けに開発されたLiDARマッピングソリューションでは、一般的な重量6キロのペイロードで、45キロ以上の範囲を1回のフライトでスキャンできるという。距離を優先させた場合は、積載重量2キロで100キロのエリアをカバーする。
写真測量向けパッケージは、PPK(データ取得後の補正処理)デバイスにも対応できる。使用するのはKLAUジオマティックPPKで、基地局から半径15キロ以内ではカメラ中心精度で3センチを実現する。
本体の寸法は、全幅178×全長132×全高52センチ。飛行時間は120分間が上限。マルチコプターモードでの水平飛行速度は最速毎時50キロ、固定翼モードでは毎時40〜150キロ。垂直方向の速度は毎時6キロ。飛行距離は固定翼モードでの最大100キロ。耐風性能は毎秒15メートル。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 国交省公認ビジネス向け「ドローンパイロット養成スクール」を開設へ、タジマ建設
タジマ建設は「ドローンパイロット養成スクールを千葉市に開設することを明らかにした。ここではフライトの基本技術から、老朽化が進むインフラの非破壊検査や災害時における測量の方法まで広範に習得できる。無人航空機の飛行に関する許可・承認といった申請方法のアドバイスをはじめ、スクール卒業後のアフターフォローも充実させるとしている。 - 東電×ゼンリン×楽天が構想する鉄塔の“ドローンハイウェイ”を使った「個配サービス」
東京電力ベンチャーズとゼンリンはドローンの飛行ルート整備「ドローンハイウェイ構想」を掲げ、2017年から既存の電力設備インフラと3次元地図を組み合わせた取り組みを進めている。今回、ここにドローンを使った個人住宅への配送サービスを目指す楽天が加わり、2020年のドローン物流実現に向け、3社共同で実証実験を行った。 - NTT西日本が100%出資する橋梁/法面/鉄塔などドローン点検の新会社、ACSLの機体販売も
NTT西日本が、ドローンによるインフラ点検サービスを行う新会社「ジャパン・インフラ・ウェイマーク」を2019年4月1日に設立する。同社は、「ジャパン・ドローン2019」に出展し、新サービスの概要を紹介した。 - 建築用ドローン点検は普及するか?業界のパイオニアに聞く
ここ数年、建築・土木の分野でのドローン点検が、さまざまな展示会で出展されるようになり、各社のブースに人を集め話題となっている。空撮した俯瞰画像や映像からデータ解析するタイプのサービスが多くみられるが、ビルやインフラを実務レベルでドローン点検するとなると、調査診断のノウハウや画像解析の技術が必要になり、実証実験の回数がおのずと求められる。