西松建設のコンクリ保温/保湿養生シート「シンプルキュア」を函体に適用、表層品質が大幅向上:コンクリ工法
西松建設は、コンクリート用保温/保湿養生シート「シンプルキュア」を推進工法の“函体養生”に適用した。
西松建設は、宇部エクシモと2017年4月に共同開発したコンクリート用保温/保湿養生シート「シンプルキュア」を、推進工法の“函体(かんたい)養生”に適用し、コンクリート表層品質の大幅な向上の他、防汚対策にも有効なことを確認した。
表層の緻密化に加え、防汚効果も
非開削で、箱型の構造物である函渠を構築する函体推進工法は、函体の製作後、直ちに足場を解体撤去して、函体内に掘削設備や重機を搬入して推進作業の準備を行う。このため、推進工法の函体コンクリートの養生は、養生スペースと養生期間を十分に確保できないケースが多い。
また、掘削作業中の粉塵(ふんじん)や重機の排ガスなどによって、函体コンクリートの表面が汚れるため、ビニールシートで函体表面を覆う作業が必要だった。
こうした課題解決のため、西松建設は、宇部エクシモと2017年4月に共同開発したシンプルキュアを、これまで実績を重ねてきたトンネル覆工から用途を拡大し、始めて函体養生に適用した。
シンプルキュアは、農業用ハウスの内張り保温材として使われるLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)製の中空フィルムに着目し、フィルムの片面に特殊な粘着加工を施したコンクリート用被膜養生シート。
施工手順は、シートの剥離紙を剥がして、粘着加工面をコンクリート表面に押し付けることで容易に貼り付き、コンクリート面を覆うことができ、保温/保湿養生の効果が期待できる。紫外線が影響する屋外での耐用期間は3〜5カ月ほど、紫外線の劣化防止剤を付与するとより長い耐用期間が得られる。
主な用途は、ボックスカルバートの側壁やスラブ下面、橋脚の柱・梁(はり)部、高欄、トンネル覆工コンクリート、擁壁などであり、一般的なマット状の養生材では設置が難しい壁状コンクリート面に有効とされる。
函体養生の適用では、函体内で使用しても推進作業の邪魔にならず、また推進作業時の汚れ防止にも役立った。適用した箇所の品質評価試験を実施したところ、従来の施工養生を行った部分と比較して、表面吸水試験(水の通り易さを指標とした試験)による表面吸水速度が14分の1程度まで低減。また、表面での超音波速度試験(超音波の伝わりやすさを指標とした試験)による超音波伝播(でんぱ)速度も約1.2倍となり、コンクリート表層が極めて緻密化され、高い耐久性を有することが確認されたという。
西松建設では、コンクリート表層品質の向上に有効な養生方法シンプルキュアを、東北地方で施工中の橋梁(きょうりょう)上部工工事にも適用する予定だという。
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