有料道路で“5G”を活用して橋梁の健全性/落下物や逆走車をAI検出/渋滞監視の3つを実験、WCP×ソフトバンク:建設×5Gの可能性
Wireless City Planning(WCP)とソフトバンクは、愛知県の有料道路で「5G」を用いたスマートハイウェイの実現に向けた3つの実証実験を行った。
WCPとソフトバンクは、愛知県の有料道路で、第5世代移動通信システム「5G」にIoTやAIを組み合わせたハイウェイ維持管理の実証実験を行った。
加速度センサーで橋梁の異常を遠隔で検知、AI画像解析で道路上の落下物など監視
今回の実証実験では、IoT(加速度センサー)による橋梁(きょうりょう)の健全性監視、AIの画像分析によるインターチェンジ監視、IoTによる渋滞監視の3つを実施。参画企業は、WCPとソフトバンク、パシフィックコンサルタンツ、前田建設工業、愛知道路コンセッションで、総務省の「高密度に展開された端末の多数同時接続通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件などに関する調査検討の請負」に選定され、請負業務として行った。
橋梁の健全性監視では、5Gの優位性に挙げられる多数同時接続の要素技術「NOMA(Non-orthogonal Multiple Access)」と、基地局からの事前許可(Grant)が不要となる「グラントフリーアクセス」を実装した「5G-mMTC(massive Machine Type Communication、大規模マシンタイプ通信)無線機」を試作開発した。
実証では、橋桁や橋脚の微小な振動を監視するため、「加速度センサー」を多数設置して、5G-mMTC無線機でデータを収集した。実験の結果、橋桁や橋脚の多点で計測した振動特性をリアルタイムでモニタリングできることを確認。これにより、災害発生時などの橋桁や橋脚の異常を遠隔地にいながら、リアルタイムに把握することが実現する。
AIを用いたインターチェンジ監視では、ソフトバンクが開発した可搬型5G設備の「おでかけ5G」を、愛知県半田市の知多半島道路の「半田中央インターチェンジ」に設置。5Gのメリットである大容量通信を用いた高精細な4K映像の伝送と、端末から近い位置にデータ処理機能を配備した「MEC(Multi-access Edge Computing)サーバ」で、AIで画像解析を行い、道路上の落下物や逆走車を検出した。高精細な4K映像を解析することで、従来のHD画質では検出できなかった小さな物体もAIであれば自動で見つけ出すことができ、道路の安全監視の効率化や異常の見落とし低減などにつながる。
IoTによる渋滞監視では、IoT無線技術とソーラーバッテリーを活用した簡易トラフィックカウンターを、知多半島道路の大府東海インターチェンジ周辺の上り車線道路上に、多数設置した。渋滞の検出精度を向上させる実験を実施し、特定地点の渋滞発生が検出できたことに加え、従来と比べ渋滞の長さをより精細に確認できることが証明された。
この技術が実用化されれば、ドライバーに対して、正確な渋滞情報を、今までよりも迅速に提供可能になり、渋滞の解消や事故の回避にも役立つことが見込まれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “5G通信”で建機2台を遠隔操作し土砂運搬に成功、KDDI・大林組・NECが共同開発
KDDI、大林組、NECの3社は、大阪府茨木市で建設中の「安威川ダム」で、次世代移動通信システム「5G」を活用したバックホウとクローラーダンプを遠隔操作により連携させる実証実験を行い、成功させた。 - 建機の遠隔操作を“5G”で効率化、大林組らが実証に成功
大林組、KDDI、NECは、5G(第5世代移動通信)を活用した建設機械の遠隔操作に成功した。5Gの活用によりオペレーターへ高精細映像が提供できるようになったことから、従来通信を利用する遠隔施工から15〜25%の効率改善があったという。 - 5Gで遠隔施工の品質向上、KDDIとNECなどが実証へ
大林組とKDDI、NECなどは5Gを活用したICT施工の実現に向けて、建設機械による遠隔施工の実証実験を行う。「建設機械の無人化」「リアルタイム遠隔施工」などの実現を目指すという。 - 自律飛行ドローンで不審者を発見、KDDI・セコムなどが実証実験
NEDO、KDDI、セコム、テラドローンは、世界で初めて4G(第4世代移動通信)を活用した自律飛行ドローンによる警備実証実験を実施し、広域施設の遠隔巡回警備に成功した。広域や夜間など警備員の人的資源が不足しやすい現場にも、警備ドローンが警備行動を人に代わって行うことで効率的な警備が可能になる。