大建工業が“LVL”用単板の加工会社「日南大建」を設立した狙いとは?
大建工業、日南町森林組合、オロチ、越井木材工業との4社合弁会社「日南大建」が2019年3月に設立され、木材資源の可能性を最大限に引き出す新規事業がスタートした。
大建工業は、日南町森林組合、オロチ、越井木材工業との4社合弁で、LVL(単板積層材)に用いる単板の防腐/防蟻処理などを手掛ける加工会社「日南大建」を2019年3月末、鳥取県日野郡日南町で設立した。日南町森林組合が日南町で原木を調達し、オロチがLVLを加工。販売は大建工業と越井木材工業が行う。4社は、国が進める国産木材の利用促進を図るとともに、日南町への地域貢献にもつなげたい考えだ。
“木材”をあますところなく利用する「木材総合カスケード利用」の事業化
LVL(単板積層材)とは、繊維方向をそろえて単板を積層し、接着した木質材料のこと。繊維方向を直交させる合板に対して、長さ方向に優れた強度を発揮し、建築物の柱や梁(はり)などの構造材や内装建材の芯材などに用いられている。
大建工業は、2015年の創立70周年を機に、10年後の2025年を見据えた長期ビジョン「GP(グロウプラン)25」を策定した。そのなかで「限りある資源の有効活用を通じてサスティナブルな社会の実現に貢献する」を掲げ、国産木材の活用を積極的に推進し、素材事業の拡大に向けた木材の総合利用による新たな用途展開を目指している。
これまでの取り組みでは、2016年11月に、豊富な森林資源を生かした林業・木材加工業に取り組む鳥取県日南町をはじめ、日南町森林組合、地元LVLメーカーのオロチとの間で、日南町内において有限な資源の“木材”をあますところなく利用する「木材総合カスケード利用」に関して事業化することを合意。日南町木材総合カスケード利用事業化検討プロジェクトが立ち上がった。
プロジェクト初の案件としては、国土防災技術と共同開発した「DWファイバー」がある。DWファイバーは、日南町森林組合が切り出した木材を用いて、オロチがLVLを製造し、その際に発生する端材(木材チップ)を有効活用した土壌改良材。2017年5月から、防風林の客土形成、法面への植生マット敷設といった土木工事を行う自治体や工事業者に提案を開始した。翌2018年には、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録され、全国各地で採用実績を拡大している。
今回、設立する新会社の日南大建は、プロジェクト第2弾の事業化案件として、オロチが製造するLVLを高付加価値化するための「単板加工処理」の事業を行う。2020年春の竣工をめどに、LVL用単板に防腐・防蟻薬剤を注入するための加工設備を備えた工場を日南町に新設。加工された単板を用いて、オロチが防腐・防蟻LVLを製造する。将来的には、不燃LVLや不燃木材に関する設備の導入も検討していくという。販売は、大建工業、越井木材工業の他にも、建材商社を通じて展開し、利益の一部を日南町に還元。研究施設やLVLの各種工場などで雇用を創出し、地方創生も実現させる。
大建工業では、「国が進める国産木材の利用促進や環境意識の高まりを受け、持続可能な資源である木質材料への関心が高まるなか、建築物の構造材や造作材としてLVLの需要は拡大している。防腐・防蟻LVLをラインアップに加えることで、さらなる用途拡大、さらには日南町の森林資源の利用促進、林業の活性化につなげたい」と木材総合カスケード利用の意義を強調する。
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