大開孔設置時でも梁高さを抑える基礎梁補強工法、“東京都市大学生寮”など6物件に適用
東急建設は、通常は開孔径の3倍の高さが必要とされる基礎梁(はり)を2倍の高さにまで抑え、コスト削減を実現した基礎梁補強工法「(仮称)RECT-HOLE)」を開発した。
東急建設は、人通孔などの大開孔を有する鉄筋コンクリート造基礎梁(はり)の強度を保ちながら、梁せい(高さ)を抑える工法「(仮称)RECT-HOLE」を開発した。RECT-HOLE工法は、開孔周囲を適切に補強することで、従来は開孔径の3倍の高さが求められていた梁せいを、2倍にまで低減することが可能で、特殊な補強金物を使用しないため、汎用性も高い。既に日本ERIの構造性能評価を取得し、五島育英会の「(仮称)東京都市大学国際学生寮計画」をはじめ、6物件に適用されている。
基礎梁のせいを開孔径の3倍から2倍の1200ミリにまで低減
これまで鉄筋コンクリート造の基礎梁に、設備点検用の“人通孔”を設置する場合は、構造規定では基礎梁の高さを、開孔径の3倍以上とする必要があった。このため、開孔径600ミリに対し、基礎梁のせいは1800ミリ以上にしなければならないが、一般的な中低層建物では掘削土量が増えるため、経済的な設計とは言い難かった。
この課題に対して、東急建設では、開孔周囲を補強し、構造上必要な所定の耐力、変形性能を確保しながら、基礎梁のせいを開孔径の2倍の1200ミリにまで低減できる基礎梁の補強工法を開発した。新工法は、基礎部の掘削土量だけでなく、コンクリートや型枠などの数量が低減でき、コスト削減や工期短縮が見込める。
新工法は、日本ERIの構造性能評価を2018年3月に取得。開孔補強用の斜め筋や特殊な補強金物を用いることなく、現行の設計手法で実現できる。また、日本建築学会による「鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型設計指針」に準拠した開孔上下補強筋、開孔際補強筋、水平補強筋を配筋することで、地震時に求められる基礎梁の構造性能を確保できることを構造実験で確認している。円形開孔だけではなく、矩形(くけい)開孔にも適用できるため、設計の自由度が高められる。
東急建設では、工場や商業施設など、建築面積が広い低層建物では、よりコスト低減効果が見込めるとして、新工法の適用範囲を広げた提案をしていくとしている。
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