IoT通信「Cat.M1」で除雪車の稼働時間と管理を可視化、フジクラとIoTBASEが長野大町市で実証
フジクラとIoTBASEは、2019年1月から3月まで長野県大町市と共同で、IoT向け通信規格「Cat.M1(カテゴリーM1)」を活用した除雪車管理の実証実験を行った。通常、除雪作業は市が外部業者へ委託しており、稼働時間の報告から市職員が手作業で確認して毎月の委託費を算出していた。
フジクラとIoTBASEは、2019年1月から3月まで、長野県大町市と共同で、「Cat.M1(カテゴリーM1)」通信を活用した除雪車管理の実証実験を行った。
フジクラの「GPSトラッカー」と、IoTBASEの「SmartMap」を活用
実証実験では、除雪車の稼働管理業務の効率化を目的に、IoT向けの新しい通信規格として注目される「Cat.M1」に対応したGPS端末の位置情報をもとに、除雪車の管理と稼働時間を算出した。
実験場所は、長野県大町市の市道各所で、ハードウェアにはフジクラのCat.M1 GPSトラッカー、ソフトウェアにはIoTBASEのSmartMapを採用。GPSトラッカーは、キャリア系の通信規格LPWA「Cat.M1」を利用した「みちびき(準天頂衛星システム)」に対応した小型かつ軽量、防水型のSIMフリーGPSトラッカーで、高速移動時にも正確に位置情報を通知。人、動物、物の追跡や管理に限らず、幅広い用途に使用することができる。
一方で、ソフトウェアのSmartMapは、さまざまなIoTデバイスのセンサー情報を地図上で可視化し、モノや人の見守りや拠点/設備のモニタリングなどに活用できるサービス。
実験では、除雪車にGPS端末を搭載し、事前に設定したエリアからの出入り時にGPS端末から送信されたメールの時刻から稼働時間を特定した。除雪車の位置はスマートフォンおよびPC対応アプリケーション「SmartMap」で、リアルタイムにマッピング。車両別に移動データや作業範囲を可視化した。
実験結果では、従来の手動による稼働集計と、システム計算による結果とを比較し、同等の精度で稼働計算できることが確認されたという。除雪車の位置情報は、30秒間隔でGPS端末から送信することで、除雪ルートをほぼ正確にマッピング。地図上では、作業状況や範囲をリアルタイムで知ることができたため、作業車の出動状況や作業場所を把握することが容易になり、除雪に関する市民からの問い合わせにも、迅速に対応可能になった他、除雪作業を計画する際にも、役立つことが見込まれる。
フジクラとIoTBASE は実証実験の結果を踏まえ、除雪事業などに活用できる自治体向けの位置情報ソリューションとして、2019年度内に製品化させる。
今回、実験を行った長野県北西部に位置する大町市は、3000メートル級の北アルプス山脈に囲まれ、平均積雪が50センチを超える。市では除雪のために約200台の除雪作業車を管理しており、除雪作業自体は外部業者に委託している。毎月の委託費は、業者からの稼働時間の報告をもとに市職員が電話などアナログな手法で確認しているため、大きな負担となり、作業効率の低下を招いていた。また、除雪作業の開始情報が知りたいときや住民からの問い合わせに対しては、その都度電話で確認していた。
実証実験ではこうした課題解決のため、除雪車の位置情報をリアルタイムに把握することで、稼働時間の自動計算に取り組んだ他、作業エリアを確認して稼働動線の適正化や住民問い合わせのスピーディーな対応といったことを目標に据えた。システム自体も、汎用用途向けの端末とソフトウェアとし、コストを抑えて行政課題を解決することを目指したという。
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