大和ハウスの「D's BIM」顧客満足度と働き方改革で、2020年に“全物件のBIM移行”を目指す:BIM(3/3 ページ)
2055年に売上高10兆円企業を標ぼうする大和ハウスは、成長戦略の重点施策として全物件のBIM化を進めている。これまでに実績として、パートナーシップを結んでいるオートデスクのRevitで作成したモデルで建築確認申請や設計と自社の住宅工場とのBIMデータ連携などを行っており、2018年度下期には71件でBIM化を行ったという。
2019年上期は16件の確認申請を予定
これまでのBIMの取り組みでは、「確認申請」「構造計算データと構造モデルの連携」「設計と工場のBIM連携」「ジェネレーティブデザイン」の4つの事例を披露した。
このうち、BIM確認申請では、2018年下期で5件の認可を受け、2019年上期には16件で申請する予定。既に認可を受けた案件では、3つの日本初の取り組みがあった。構造のReviデータでの確認申請をはじめ、意匠・構造・設備ともにRevitでデータを作り、特に設備で行ったのはこれまでに無いケースだった。さらに構造適合性判定は日本建築センターに申請し、構造適合性判定までの認可を受けた。今後は、省エネ適判、検査、消防でもBIMへの移行を検討している。
手間のかかる構造計算と構造図の不整合の確認方法も、効率化させている。一貫構造計算ソフトウェア「BUS-6」とRevitを、構造システムのオプションプログラム「+Revit Op.」で連携させ、Revit上では、計算モデルと構造モデルを目視で確認。さらにRevitからExcelに出力し、目視で分からない鉄骨のサイズや梁(はり)符号などの整合性を図っている。
設計と住宅工場とのBIM連携では、全ての住宅工場に導入されているデータロジック社の「S/F REAL4」と、ベースになるRevitで作成した構造設計モデルをダイレクトにリンクさせる試み。設計情報を製作情報に連携することで、1から図面を作らずに、工場で鉄骨の工作機械にRevitデータを持ち込んで製作できる。設計の次工程での二重化作業が無くなり、設計→工場→モノづくりとデータが一元化される。
集合住宅のジェネレーティブデザインの取り組みでは、オートデスクの最新技術を用い、最適設計を省人化で実施。敷地や法規、建物の条件を入力すると、計画案を何万通りも自動的に提案。デザイン形状や環境、コストといったさまざまな評価までが行われ、より有効な土地の活用方法などに生かせるメリットがもたらされ、既に建築でも採用を始めているという。
伊藤氏は最後に、「顧客満足度の向上と働き方改革のために、オートデスクの協力を得ながら、BIMによって業務の在り方を全く変えていく」とまとめた。
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