大日本コンサルと日立システムズ、国のフィールド試行に橋梁点検用ドローンを適用し「安全装置で通行止め無し」で飛行:ドローン
大日本コンサルタントと日立システムズは、国が実施する2018年度のフィールド試行業務で、点検記録作成支援ロボットを3案件・7橋脚に適用したことを明らかにした。今回の検証は、「まずは実行して課題をそこから見いだす目的」で行い、結果、必要なラストワンマイルの技術が確認でき、社会実装に向けた大幅な前進になったという。
建設コンサルタントの大日本コンサルタントと、日立システムズは、ドローンを活用した橋梁点検の分野で協業し、鋼橋・ロボットメーカーの川田テクノロジーズとも協力して、点検業務の効率化に向けた技術の社会実装に取り組んでいる。このほど、国が実施する2018年度のフィールド試行業務で、3案件・7橋脚にロボット技術を適用した。その結果、国のとりまとめた納品マニュアルに基づく、“3次元成果品”の納品までが可能なことが実証された。
「実証で社会実装に向けた“ラストワンマイル”の技術を把握」
今回、フィールド試行業務で適用されたロボット(ドローン)は、大日本コンサルタントと、川田テクノロジーズが、NEDOの支援を受けて開発した橋梁点検用ドローン「マルコTM」。複雑な風の変化に強い回転翼機構をはじめ、点検区域外に機体を逸脱させない第三者安全装置の搭載、充実した操縦・画像撮影支援機能などの特長を持っている。
データ解析/処理の技術は、日立システムズが2016年9月に販売を開始したクラウドサービス「ドローン運用統合管理サービス」を活用。ドローンで撮影した大量の2次元画像(写真)と、写真をベースに生成した構造物全体の3次元モデルをひも付ける「3次元管理台帳機能」を備え、点検結果や劣化箇所も、3次元の管理台帳上で保管することができる。
大日本コンサルタントの担当者は、両社の技術を組み合わせ、フィールド試行業務に適用したことについて、「まず実行して、そこから課題を見いだしていくことが主目的だった。実際のフィールドで試行したことで、当社と日立システムズによる技術の可能性、運用プロセスの改善課題などを確実に把握できたことが収穫。また、社会実装に向けた必要なラストワンマイル技術を洗い出すことにもつながった」と成果を話す。
「通常であれば、航空局から通行止めが求められる通行量が多い道路付近での飛行撮影において、大日本コンサルタントが特許出願中の安全装置を適用することで、通行止めを実施しない飛行撮影の承認が得られた。このようなノウハウの蓄積が、現場業務の効率化には効いてくる。これらの知見をもとに、さらなる効率化と精度確保に向け、今回と同様に協業(オープンイノベーション)して開発を進めていく」とコメントした。
今後の社会実装化までのハードルについては、「1.ロボットの具体的な活用方法の蓄積、2.(国、自治体などの)橋梁管理者ならびに業務を請け負う建設コンサルタントへの技術展開の進捗および浸透の他に、3.既に定められたメンテナンスサイクルや方法(近接目視を基本とした従来点検)とは異なる、ロボットとカメラを使用した点検方法論に対する技術的裏付けをどう設定するか?といった課題がある。それとは別に、新しい点検方法に新たな価値を見いだし、点検革命的な方向に向かうのか?なども含め、今後もいろいろと議論が必要だと見ている」。
その上で、「まずは、使いながら考えていくことが想定されるが、それでもロボットの使用が普遍化するのに、あと1年はかかると予測。まずは、国のフィールド試行へのコミットを通じてそれらに貢献し、社会実装を加速させたいと考えている」と、今後の方針を示した。
国が橋梁(きょうりょう)点検で、ドローンも含めたロボットの導入を進める背景には、全国で約70万にも上る道路橋の老朽化問題がある。2013年の道路法改正後は、全国で近接目視点検が進められているが、近接目視による点検方法は、点検員や交通誘導員の量的不足、外業時の安全確保、膨大な内業などが顕在化しており、これらの解決が強く望まれてきた。
こうした要望を受け、国土交通省は2013年度に「次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会」を設置。道路橋点検記録の作成支援を行うロボット技術を公募し、検証/評価を行ってきた。
2018年3月には、このロボットを用いて取得した橋梁点検記録の納品仕様を定めた「点検記録作成支援ロボットを用いた3次元成果品納品マニュアル(橋梁編)(案)」を策定。2019年2月には、ロボット技術をはじめとした新技術の導入に一定の道筋となる「点検要領(技術的助言) 道路橋定期点検要領」が改定され、同時に「新技術利用の際のガイドライン(案)」「点検支援技術性能カタログ(案)」も示されている。
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